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世界でたった一つの物語を紡ぎ、届ける

Professional
2019/07/08
インタビュー
  • 134
ソニー株式会社 クリエイティブセンター デザイナー
金田紗季
(筑波大学 芸術専門学群2002年入学)

『まだ見ぬ「誰か」を思う想像力』と『出会う事で深まる世界の認識力』。大学時代に好奇心に従って行動した結果、辿り着いたのは二つの大切な視点。筑波で培った力が今でも強く生きていると語るデザイナー金田氏の過去と現在、そして未来に迫った。

未知との出会いは想像力を培う

筑波大学を目指したきっかけを教えてください。

幼少期から絵を描くことが好きだったのですが、自分の書いた絵で周りの人が喜んでくれるのが嬉しくて。その先の可能性を見てみたい、という思いで芸術系に進むことに決めていました。美大をいくつか見学する中、筑波大学の美しい緑と広々とした青空にすっかり魅了されてしまい(笑)。
総合大学で芸術以外の事を幅広く学べる事も決め手になりました。

大学では何を学ばれていたんでしょうか?

専攻は視覚伝達デザインで、グラフィックデザインの基礎を学びました。それと同時に、教育学、心理学、社会学など芸専以外の授業も積極的に受けましたね。今思い起こすと、その時に受けていた専攻以外の授業での気づきが、「今の自分を構成する大切な土台となっている」と感じます。

芸専の授業では、課題に対する解決策、問いの答えとしての「デザイン」にフォーカスをする事が多かったのですが、心理学の授業を受けた時に「問いを生み出す、人の認知自体が間違っている可能性がある」ということに気づかされました。どんなに良い答えを出しても、出発地点がそもそも違っていたら意味がありません。「問い、そのものを疑う」という視点は、今の仕事でも活きています。

金田②

学生時代はどんな生活を送られていましたか。

興味ある事には、どんどん飛び込んでいました。ヤドカリ祭実行委員になったり、スケート部や海洋研究会に入ってみたり、地域の町おこしプロジェクトに参加したり、筑波大学付属病院のQOL改善をしたり。越後妻有の芸術祭ボランティアスタッフとして、深夜バスで新潟に通ったこともありました。自分の知らない世界と出会う機会を作ろうと意識的にしていました。未知なるものと出会うと、自分が認識している世界が広く、深く変化するのを感じるんです。バイアスが掛かったまま理解したつもりになっている事象が、ぶわぁと壊されて、鮮やかに色づくというか。
また現場に行くと、そこで生活する人の事もよりリアルに想像できるようになると感じられて。

いつからデザイナーという仕事を目指されたんでしょうか。

実は、自分のデザインが社会で通用するかどうかなんて、学生時代、全く分からなかったです。私の作品には、ひと目で分かる、圧倒的な個性があまりなくて。
大学3年生のとき、制作した作品が、CSデザイン賞の学生部門賞を受賞して、その授賞式に招かれたんです。そこで、審査員でグラフィックデザイナーの佐藤卓さんにお会いしました。その時、「デザインした、と気づかれないぐらいのデザインこそが、良いデザインだ」という言葉に触れ、ハッとしたんです。
様々なアートディレクター達が華やかに活動する中、佐藤さんの姿勢はあくまでも物、そのもののあり方に真摯に向き合う姿勢があり、惹かれました。
その後、ロゴのコンペで入賞し、NPO法人のロゴデザインをする権利を得たんですが、その際には「自分らしさ」を表現することは忘れ、クライアントのためにベストを尽くす事だけを考えてデザインしました。そしたらNPO法人の方がとても喜んでくれて。その頃でしょうか。この道は面白いかも、と。

現在のお仕事について教えてください。

ソニーでデザイナーをしています。コミュニケーションデザインといって、組織やプロダクト、サービスなどのブランディングを担う仕事です。

製品・サービスの中にある、伝えるべき「核」とも言えるメッセージをクライアントと一緒に見つけ出し、抽出したメッセージを一つのストーリーとして紡ぎ、可視化し、届けることが仕事です。
グラフィックや映像、空間、webなど、消費者とつながる全てのタッチポイントのクリエイティブ責任者でも有り、それぞれバラバラになりがちな点と点を繋ぎ、物語を作り出すストーリーテラーでも有ります

金田通常写真_CU6A1134_small_2

すごく面白そうですね。

私はR&Dや、新規事業に関わることが多く、組織やプロダクトのビジョンを可視化して、向かうべき方向性を定める上流工程から、一つ一つのメッセージをお客様の元にしっかりと届けるまでの責任を負っているので、とてもやりがいがあります。

プロジェクトメンバーの中にある、熱い思いや、ビジョンを聞き出すのはいつもワクワクしますし、その大切な思いを昇華させて、具体的なデザインに落とし込む際は、すごく悩み考えます。その分出来上がった時の喜びはとても大きいですし、更にお客様の喜びの声を頂いた時は、胸が熱くなります。

最近も、ブランディングを担当した「toio」というロボットトイが、現場でどう子供達に喜ばれたかをメンバーから聞いて、会社でランチを食べながら涙ぐんでしまいました(笑)

金田④

誰に届けたいかというところから考えるんですね。

そうです。これを喜んでくれるのは誰なのか、その人の本当の欲求はどこにあるのか?
様々な視点で、そのプロダクトの可能性を想像しながらコンセプトを作っていきます。その時に重要なのは、バイアスを外す勇気と、まだ見ぬ「誰か」を思う想像力。筑波で培ったものが、そのまま生きていると思います。

人の心を動かす、デザインの力を信じてる

コミュニケーションデザイナーとして必要な能力やスキルは何ですか?

3つあると思います。
1つ目は問いを立てる力。私の場合、ヒントはクライアントの中にあると信じていて、その思いを聞き出すプロセスを大切にしています。その時に重要なのが、クライアント側にもバイアスが存在している可能性があると認識する事です。メタファーやビジュアル、言葉を使いながら、色々な角度で質問し、核を導き出す「問い」を探していきます。
2つ目は、伝えたいことのエッセンスを抽出して再結晶する力。重要なキーワードを抽出し、一つのストーリー、そして具体的なビジュアルに昇華させていきます。
そして最後の3つ目は想像力と共感力。ひとりよがりに陥らないで「これって本当に正解なの?」と常にお客様視点に立ち戻り、チームの思考を原点に引き戻す力は必須だと思います。その為には、社会の価値観の変化に敏感でいる事も重要です。

それはトレーニングできるものですか?

プロとして仕事をする限り、トレーニングは不可欠だと思っています。

金田1

デザイナーとして働く中で一番辛かったことは。

Xperiaのカラーデザイナーをしていた頃、海外の工場に年10回ほど行っていました。現地の工場の方や設計の方と一緒にああでもない、こうでもない、と何度も何度も理想の色に近づけるように作業を繰り返すのですが、「これでいいでしょ」という現地の思いと、自分たちのデザインへのこだわりが衝突するわけです。現地の方に熱意をもって説得し、一緒にベストを目指して動いてもらうことが体力的にも精神的にもきつかったなあと思いますね。

かなだ2

デザインの賞をたくさん受賞されています。

素晴らしいプロダクトデザイナーと組む機会に恵まれて、red dot のbest of best やiFのgoldなどを頂きました。ドイツの受賞式ではとても興奮しました。大変だった制作過程の頑張りが評価された事も嬉しかったですが、「世界をデザインでより良くしたい」という熱い思いを持った全世界の人々が集結していて。皆、とても良い顔をしているんです。私もその一員であり続けたいな、と思いました。

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日頃気をつけている事はありますか。

既成概念や古いシステムが次々と壊れていく一方で、新しいコンセプトが同じ速度で生まれてくる、そんな時代に生きているので、壊れゆくものの中で人間が拠り所とするものは何か、人や組織、社会の関係性、家族のあり方はどうなっていくのか、ということにはアンテナを張って先読みを心がけています。社会が求めるデザインは時代時代に合わせて変わっていくので、価値観の変化には敏感でいたいと思っています。

プライベートでも活動されていて、去年はアフリカでドキュメンタリーを撮影したとか。

Verde Africaという炭の屑と芋をこねてブリケットという人工炭をつくる会社の映像をつくりました。ブリケットは今までは捨てられていた炭屑を再利用して作るので森林を伐採しないだけでなく、アフリカの雇用を生み出し、社会にとっていい循環を生むんです。その会社のプロモーション映像として、動画を作ったところ賞を取り、SDGsの教材になりました。想定外だったのは取材や作品を通して、その会社の経営者が忘れかけていた大切な原点を思い出した、と言ってくれた事です。
また、脚色なしの、ありのままに現地の人々の生き様を捉えた素朴な映像が人々の心を動かしたということも、大きな発見でした。

金田⑤

色んなことにチャレンジされている金田さんが次考えられていることは?

ビジョンが視覚化されることで、人の心が動き、何かのアクションに繋がる、という事に面白さを感じていて、その可能性をもっと広げて行きたいと思っています。社内外の様々な方と、どんどん実験やコラボレーションしてみたいな、と思ってます。

金田さんのパッションの源は何でしょう。

誰かを笑顔にしたい!という想いでしょうか。一緒に働くメンバーの笑顔もそうですし、お客様の笑顔もそうです。笑顔って不思議で、その人自身が一歩踏み出す勇気になったり、誰かを思う優しさに繋がっていたりするんじゃないかなと思うのです。

あなたの“つくばウェイ”とは?

出会いから生まれる、化学変化をとことん楽しむこと。

現役大学生や筑波大を目指す人に一言!

出会いを大切にし、どんどん興味を広げ、「自分の認知している世界」というものを広げて欲しいです!
筑波大学は興味を持てば、いくらでも他学の授業を幅広く学べるという環境があります。そして多様な感性と価値観を持った人との出会いが身近にある環境は、本当に素晴らしいです。異なる価値観を持った人たちが生み出す化学反応は、想定を超えたクリエイティビティを産む、最高の土壌だと思います。それを生かしてほしいですね。

金田紗季さんが所属する
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プロフィール
かなだプロフィール
金田紗季(かなださき)
神奈川県横浜市生まれ。アメリカで幼少時代を過ごした経験から、色やデザインの文化の違いに興味を持つ。デザインを学ぶ為に筑波大学芸術専門学群入学、視覚伝達デザインを専攻。2006年ソニー株式会社クリエイティブセンター入社。パッケージデザイン、Xperia™スマートフォンのカラーデザインなど幅広く手掛け、Red dot best of best 、 iF Gold 、GOOD DESIGN AWARDなどの数々の賞を受賞。2015年よりコミュニケーションデザイナーとして新規事業立ち上げに関わる傍、個人として「ストーリーを伝える」ことを軸に活動している。
基本情報
所属:ソニー株式会社
役職:デザイナー
出身地:神奈川県横浜市
出身大学:筑波大学 芸術専門学群 視覚伝達デザイン専攻
筑波関連
学部:芸術専門学群
研究室:笹本研究室
部活動:やどかり祭実行委員会 スケート部(途中まで)
住んでいた場所:天久保3
プライベート
趣味:未来を妄想する事
特技:イラストを描く
心に残った本:はてしない物語
心に残った映画:インターステラー、ガタカ
好きな食べ物:クリエイティブで美しい料理
訪れた国:27カ国
大切な習慣:色々な世界と出会うように心がける
口癖は?:なるほど!

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