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黒崎スライダー

10年後にも「価値がある」と評価されるサービスを

Entrepreneur
2017/03/27
インタビュー
  • 75
株式会社BearTail 代表取締役社長
黒崎 賢一
(情報メディア創成学類 2010年入学)

高校時代からIT系のテクニカルライターとして記事執筆するなど、エキスパートとして活躍してきた。そんな経験を経て、筑波大の仲間と会社を設立。企業の経費精算や個人の家計簿を自動作成するサービスを提供し、忙しい現代人の“無駄な時間”を省きたいという、その背景にはどんな思いが込められているのだろう?

「人生が変わるサービスそのものの作り手になって、インパクトを与えたい」と思い、筑波大学在学中に創業

最初にITに興味を抱いたきっかけとは?

ゲームを勝手に買ってはいけないという家の方針がありましたが、インターネットから得た情報として、どうやらゲーム機を改造すれば自作のソフトが動かせるようになることが分かって。中学の時、好奇心から壊れたゲーム機をインターネットで購入し、自分で改造して遊んでいました。

すごい行動力ですね。

その手法をブログに書いていたら出版社の方に「うちでも記事を書いて下さい」と声をかけられ、高校1年からPC雑誌出版社の外注テクニカルライターとして、毎月、月刊誌に巻頭のセキュリティコラムを書くように。それは大学に入った後も継続していたんですよ。

高校生のときから仕事をしていたのですね。

テクニカルライターとしての活動以外にも、自分でサーバーを立ち上げてサイトを構築し始めました。その時借りていたレンタルサーバーを運営したのが筑波大の在学生の方でした。その時に、純粋にスゴイなと感動しました。

それで筑波大を目指すことに?

はい。筑波大情報学群にはテクノロジー、特にセキュリティ系に強い人たちが集まっているんだという印象を持ち、筑波大を志すように。AO入試で入りました。

入学してみていかがでしたか。

学ぶ環境として、とても良かったですね。遊べる場所がそれほどないので勉強に集中しやすかったと思います。

黒崎4

ライターの活動も続けていたのでしょうか。

そうですね。途中から朝日インタラクティブという出版社に移り、CNETという媒体でビジネスマン向けにスマホアプリに関する記事を中心に執筆していました。

大学3年で起業。なぜ、このタイミングで起業をしようと?

ライターの仕事は僕が書いた記事で「読者の人生を動かしている」と思うとやりがいがありました。今でも実際にそうだと思います。同時に、「人生が変わるサービスを紹介することで、人生を動かす」のではなく、「人生が変わるサービスそのものの作り手になって、インパクトを与えたい」と思うようになったんです。

それで、自分の手でプロダクトそのものを作ろうと、すぐに筑波大情報学群の仲間を集めてサービスを作りはじめました。僕の自宅アパートを拠点に、最安値自動注文代行サービスの提供や、筑波に特化した賃貸物件、美容室、アルバイトの検索サービスを提供し始めました。サービスの信頼性を高めるため、創業した形です。

どのような観点から仲間を集めたのですか?

あまりクラスの人とコミュニケーションをとっていなかったんですが、「ユーザーの求めるサービスを提供する」と決めて、一緒に目標を共に出来る人を探しました。

具体的には、研究室の発表を通して「すごいポテンシャルがある」と思った人、ほぼ初めて喋ったんじゃないかという相手に声をかけていきました。最初はみんな本気ではなかったかもしれませんが、1、2年やっていくうちに本気で良いサービスが作りたいという覚悟が生まれていったと思います。

筑波大で大きな収穫があったのですね。

創業メンバーに会えたのは、筑波大に行って良かったと思える一番の出来事ですね。操業から約1年後には、3LDKの部屋でルームシェアをしながら、リビング部分をオフィスにして働いていましたが、それができたのも同級生だったからだろうと思います。

そのメンバーは今も中心的なメンバーとなり、皆で「ベアテイルを大きくすることで、良いサービスをたくさん作って届けよう」と切磋琢磨しています。

黒崎3

ご自身は現在休学されていますが、非常勤講師を務められているとか。

学校側から依頼を受けて、会社を作るきっかけだとか、サービスを作るにはという講義をさせて頂きました。もちろん、僕にとって財産である筑波大の仲間の話も。

人力とソフトウェアを融合させる

2012年に設立した株式会社BearTailでは、どんなビジョンを掲げていますか?

会社として掲げているビジョンとしては「無駄な時間をなくして豊かな時間を作る」ということです。

この言葉の背景には中学、高校時代の経験があるのですが、先ほどお話した、壊れたゲーム機を自分で改造して実際に動いたときの達成感はあったにせよ、結果として、それがゲームだと人の道がゆがむケースがあります。例えば学力が落ちるだとか、ひきこもってしまうだとか。

黒崎2

たしかに、そうですね。

そういった状況を目の当たりにした時、“時間”といっても、何か将来の資産になるようなことに費やす時間と、本当に消耗される時間の2種類があるのだなと。例えばゲーム会社は大きな利益を出しているけど、それが日本にとって正しいことなのかどうか、僕は明言できない。もしかしたら10年後の日本の国力が落ちているかもしれません。

そのような思いが会社のビジョンに結びついていると。

はい。会社としてただ“稼ぐ”を目的とするのではなく、10年後にも「価値がある」と評価される時間を提供したいという信念を持ち、そのために、無駄な時間を減らすことにフォーカスしたサービス、具体的には、エンジニアリングで業務の効率化できるようなサービスを皆さんに提供することを常に意識しています。

というと、人生は何事も効率的であるべきだと考えている人間に思われがちですが、僕自身、公園でブラブラしたり、山奥で魚釣りすることも好きで、それはとても大切な時間なので、皆さんにとっての、そういった時間を増やすために、その他の無駄な時間を削りたいと考えています。その結果、生まれた時間でゲームに時間を使うのはもちろんありだと思います。

ちなみに会社名の由来は?

BearTail(ベアテイル)は熊の尻尾という意味です。こぐま座の尻尾にある北極星は昔から道しるべになっているので、会社としてそんな存在になろうという気持ちを込めました。単刀直入に株式会社北極星にしてしまうとラーメン屋さんっぽいですからね(笑)。熊の後ろ姿の会社ロゴは僕がデザインしたんですよ。

では、御社が提供しているサービスについて教えて頂けますか?

大きく分けて2つありまして、1つは「Dr.経費精算」といって、会社に申請しなければいけない交通費、経費、出張費などのレシートをスマホで撮影するだけで自動データ化される経費精算システムを法人向けに提供しています。

もう1つは「Dr.Wallet」といって、同じくレシートを自動データ化し、グラフでお金の流れを見える化できるサービスです。簡単にいうと家計簿のような役割を果たしてくれる、全自動お金管理サービスですね。

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仕事を通して印象的な出来事はありますか。

サービスをリリースしたばかりの頃はダウンロード数が数百人しかいませんでしたが、トライ&エラーを繰り返しながらサービスをより良くしていったら、朝の情報番組『ZIP!』で紹介して頂けることになって。

テレビで紹介されたのは、ほんの10~20秒でしたが、放映された瞬間にダウンロード数が2万、3万とどんどん伸びていって、「これは、すごいことになったぞ」と。手触り感があるインパクトといいますか、自分たちが手掛けたサービスがユーザーの生活に直接影響を与えるのかもしれないと思うと、自分の予想を遥かに超えたやりがいを感じましたね。

手書きだったものが自動データ化されると、ずいぶん時間が削減できるでしょうね。

もし、まだ手書きでやっていたら人類は毎月20年分ぐらいの時間を無駄にしていたかもしれません(笑)。

経営者として、何かこだわりはありますか?

「人と機械の融合」をテーマに、単なるソフトウェア会社ではなく、人力のインフラとソフトウェアのインフラをバランス良く持つ会社でありたいと思っています。

Dr.Walletは一見テクノロジーを駆使したアプリに見えて、実はその裏側に2000人ぐらいの主婦がオペレーターとして毎日10万枚ほどのレシートを打ち込んでくれているんですね。Dr.経費精算も同じく、ユーザーがレシートを撮影すると、その裏でオペレーターがデータを打ち込んでいる。まさに“人力インフラ”です。

なるほど。では、今後のビジョンを教えて下さい。

短期的には、出張の手配代行をやろうとしています。たとえば北海道出張が決まったとして、自分で飛行機の時間を調べてチケットを手配しなければいけない手間を省き、こちらで代行するサービスを提供しようと。秘書やアシスタントにお願いする感覚でご利用いただけると思います。

長期的にはいかがでしょう?

インターネット上のサービスにおいては速攻でコピーをされてしまうので、テクノロジー単体で勝つのは難しい。ですから、やはり人力のリソースを主役として解決していくこと、テクノロジー単体では解決できない領域を発見し、1つずつ専用の人力オペレーションを作って徹底的に解決していくことが、今後の課題だと思っています。

あなたの“つくばウェイ”とは?

仲間と出会う場。創業メンバーと出会った場所ですし、その後BearTailの成長の礎を作ってくれるメンバーと出会った場所です。

現役大学生や筑波大を目指す人に一言!

学問を究めたい人ほど1年間ぐらい休学して社会で働くことをおすすめします。外の世界でビジネスに打ち込むことで、自分の研究の立ち位置や先の未来が考えられるようになるからです。
実際、うちの社員にも一度BearTailで働いて、筑波大に戻った人間が多く居ます。学生時代に一度立ち止まって考える時間が欲しい人は、BearTailで働いてみてはいかがでしょう?

プロフィール
黒崎プロフィール
黒崎 賢一(くろさきけんいち)
1991年生まれ、東京都出身。東京都私立武蔵高等学校を卒業後、筑波大学情報学群情報メディア創成学類に進学。高校在学中からテクニカルライターとして、ウェブサービスやスマホアプリにおけるセキュリティ対策の分野について執筆。大学在学中の2012年に仲間を集め株式会社Bear Tailを設立。「無駄な時間を省き、豊かな時間をつくる」をミッションにDr.WalletやDr.経費精算を開発し、注目を集める。現在、株式会社Bear Tail代表取締役社長、筑波大学非常勤講師。公式HP http://beartail.p
基本情報
所属:株式会社BearTail 
役職:代表取締役社長
出生年:1991年
血液型:東京都
出身地:武蔵高等学校
出身高校:筑波大学
筑波関連
プライベート
好きな食べ物:餃子、マンゴー、なす、キムチ

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