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広告は消えるもの。けれど、心に残る広告を目指した。

Professional
2016/10/10
インタビュー
  • 49
コピーライター
一倉 宏
(人文学類 1974年入学)

筑波大1期生として、まだ建設中であったキャンパスで学んだ記憶が鮮明だと一倉氏。卒業後はコピーライターとして歩み、約40年となるキャリアの中で生み出したのは、名作ともいえる数々のキャッチコピーだ。「芸術家と違って自分の作品を作っているのではない」と断言するが、彼のコピーは何かが違う。現在はクリエイティブディレクターや作詞、筑波大ブランディングも手掛ける一倉氏が、広告コピーを語った。

世の中に浸透した「うまいんだな、これがっ。」

1974年、筑波大学の第1期生として入学されました。当時はどんな気風でしたか。

新構想大学と言われていて、今までの大学の制度とは全く違う、未来を目指した新しいタイプの大学でした。新しい大学ということで少し不安はありましたけど、好奇心のほうが勝っていたし、先生方もやる気満々で面白かったですよ。

入ってみると当然、先輩たちはいなくて、そのぶん先生、友人との距離が近かったですね。当時は第一学群と医学、体育しか設置されていなかったので、学類を超えた横のつながりもありました。体専の学生が練習している姿も、近くで見えましたし。

第一学群人文学類に進んだ理由は?

高校時代から詩を書いたりするのが好きだったので。第1期では、文学専攻は人文学類だったのです。

何か印象に残っていることはありますか。

体育芸術棟(現・5C)以外の校舎は建設中でしたので、体芸棟で授業を受けていた時に外で工事をしている音が聞こえていたことが記憶に残っています。それと当時はみんな、学校から徒歩圏内の宿舎に住んでいましたから、雨の日に学生が長靴を履いて登校するという風景も鮮明によみがえります。食事代を浮かせるために寮生と協力して夕食当番を決めまして、交代で料理をしながら節約をしたことも良い思い出ですね。

部活はされていたのですか?

部活といいますか、仲間を集めて「筑波文学」という文芸誌を立ち上げて、詩や小説を掲載していました。

就職に関して考えていたことはありましたか。

2つの道、どちらに進もうかと考えていました。1つは、担当の先生から「院に残って万葉集の研究を続けなさい」と言われたこともあり、大学院に進むこと。もう1つ、編集者になることを考えましたが、編集者というのは自分で言葉を書く職業ではないなと思った時に、コピーライターという職業を知って。僕は自分で言葉を書きたい思いが強かったですから、コピーライターが向いているんじゃないかと。

しかも、広告はデザイン、音楽にも携わる、一種のサブカルチャーのような職業。自分に向いているんじゃないかという直感がありました。

そして卒業後にサントリーに入社。

当時は、宣伝部の制作室というところで専属のコピーライターを募集していて、一次審査も二次審査も、作文審査。あとは社長面接、という具合でしたね。いまはもう、社員にクリエーターがいて社内制作する企業は、ほとんどなくなりましたが。

どんな仕事をされていたのですか?

駆け出し時代はチラシのコピーから始まって、だんだん小さい枠の広告のコピーを書くようになって。もっと任されるようになると担当商品を持ち、雑誌広告や大きな枠の新聞広告のコピーを書くようになりました。大学時代の直感通り、コピーライターの仕事は自分に合っていて、毎日仕事が楽しかったですね。

そして代表作ともいえる「うまいんだな、これがっ。」というコピーを考案。

サントリーにいた頃に作ったコピーの中で一番印象に残っている仕事です。1992年頃、モルツというビールのCMで萩原健一さん、和久井映見さんが最後に一言、「うまいんだな、これがっ」と言う内容でしたが、この言葉が世の中に浸透して、ビールのCMにもかかわらず小さい子供がジュースを飲んで「うまいんだな、これがっ」と言ったり(笑)。最近も、このCMを知らない世代の人から、「うちのお父さんは毎晩ビールを飲むと、かならず『うまいんだな、これがっ』と言うんですよ」と。

32歳で仲畑広告制作所に移籍されています。

サントリー系列の広告制作プロダクションから独立されていた仲畑貴志さんに誘われて、移籍することにしました。それから3年が経った頃、東京コピーライターズクラブのグランプリを受賞したんですね。すると仲畑さんが独立を促して下さって、当時35歳でしたが1人でもやっていけるかもしれない、ということで独立を決めました。

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仕事する上でのこだわりはありますか?

コピーというものは自分の作品ではない、ということですね。芸術家と違って、自分の作品作りをしているわけでも自己表現しているわけでもなく、人の頭の中にコピーを残して商品を買ってもらうためのものなので、“皆が共感できる”ことを大前提に、面白くて強いコピーを考えることが私の役割だと考えています。

1つのコピーについてどれくらい考えるのですか?

若い時はとにかくたくさん書いていましたけど、最近はいきなり言葉を書くのではなく、まずイメージを膨らませます。この商品をアピールするために、何をどう届けたらいいのか、そういった上手くいくイメージを作るんですね。それが見つかるまでコピーは書かない。そして、これだというものがある程度見つかれば、あとはそれをどう言葉で表現するかを考えながら書き始めるといった感じですね。

40年近く活動されていて、アイディアが尽きることはないのでしょうか。

仕事なので、なんとかひねり出しています(笑)。ただ、その商品ごとに特徴やアピールしたい点、ターゲットなどが変わってくるのでアイディアが尽きることはないですよ。

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現在は、クリエイティブディレクターの役割も担っているそうですね。

ベテランの域に入ってからは、全体を統括するディレクターとしての立場にいます。広告を完成させるために必要なフォトグラファー、デザイナー、モデルなどを選定してチームを作り、彼らを動かす監督的な立場を担っていますが、僕は自分でもプレイヤーとしてコピーを書くことにこだわっているので、コピーライター兼クリエイティブディレクターという立場でいることが心地よいと感じます。

1期生として筑波大ブランディングに尽力

仕事を通して影響を受けた人はいますか?

尊敬する先輩という意味では糸井重里さん、先ほど話に出た仲畑さん、そして眞木準さん。だけど僕たちコピーライターは1つのプロジェクトに一緒に関わることはないですから、直接的に影響を受けることはないんです。それに影響を受けてしまっても、いけないと思う。なぜなら影響を受けてしまうと、その人みたいなコピーを書こうとしてしまって、その領域ではその人を超えられないことに気付くだけですから。

仲畑さんの会社にいた頃も、先輩後輩として仲畑さんから何かを教わったということはないんですよ。ただ、刺激を受けた存在であることは間違いないですね。

2010年からは、筑波大のブランディングに携わっていますね。

それ以前から、大学の理念を表すスローガンのようなものを作ろうとしていたのですが、学内だけで考えてもなかなか決まらないと。その話を聞いていて、「私が手伝います」と申し出ました。1期生出身なので、ではそもそも、どうして筑波に新しい大学を作ったのかという原点を見つめ直し、「IMAGINE THE FUTURE.」というブランディングメッセージを提案しました。それに呼応して「未来構想大学」というコンセプトも生まれました。

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ご自身が感じた“筑波大の原点”とは?

卒業後30年以上が経って改めて学校に行ってみると、キャンパスそのものは当時とずいぶん変わっていました。ただ、筑波大が創設された時の「開かれた大学」という建学の精神は、今の時代にも変わってはいない。ずっと挑戦者でいよう。そんな気持ちを「IMAGINE THE FUTURE.」という言葉に込めていますし、もっと言えば、日本で一番変わっているといわれるぐらい「型」から飛び出した大学でいて欲しいです。

筑波大には、旧帝大などのエリート臭がない。そこが、いいんです。とはいえ、筑波大生は卒業して社会に出ると、「優秀で真面目だ」と言われることが多いみたいですね。もっとのびのびと“おかしな人材”、つまり多様性のある人材をたくさん世の中に輩出して欲しい。そんなことを学長にもお話ししているんですよ。

筑波大に行って良かった点は?

僕らのときは皆が学生宿舎で暮らしていたので、そこで仲間と濃い“筑波時間”を過ごせたことが良かったですね。もしも東京の大学に行っていたら、大学の外に面白いことがたくさんあり過ぎて、自分たちで楽しむための何かを生み出さなかっただろうと思います。その時の濃い経験が、今の仕事に活きているかもしれません。

そういった時代を超えた思いが「IMAGINE THE FUTURE.」というコピー、そして同題のメッセージソングの詞に込められていますね。

「IMAGINE THE FUTURE.」のメッセージを学内にも浸透させるには、歌にするのがいいのではないかと提案したら、そのアイディアを学長が気に入って下さって。2011年の入学式で披露することになっていましたが、入学式前に東日本大震災が発生したことで体育館が使えず、フィールドで入学式を行うことになりました。その時、歌手のクリス・ハートに歌ってもらったのが、この歌をお披露目した一番最初です。

作詞を手掛けることもコピーライターの仕事なのでしょうか。

コマーシャルの挿入歌もコピーの一部だと思っているので、コマーシャルの中に歌詞が必要な場合は僕が手掛けています。CM内の短い音楽から派生して、長い曲を作詞することもあるんですよ。例えば歌手のクリスタル・ケイさんが13歳の時に歌った、サントリーのビタミンウォーターのCM曲。その「何飲もっかな、ビタミンウォーター」に始まって、彼女のデビューシングル『Eternal Memories』の作詞を担当することになりました。

もう1つ、2007年に発売された斉藤和義さんの『ウェディング・ソング』は、もともとゼクシィのCMで使うために作った30秒ぐらいのものでしたが、視聴者からの問い合わせが多く、斉藤さんご本人から「せっかくだから一曲にしたい」と言われて、じゃあ「詞を書きましょう」と。

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CM曲が1曲になることはどんな気持ちですか。

斉藤和義さんがギターの弾き語りで『ウェディング・ソング』を披露した時、静まり返った武道館の客席から男性のすすり泣く声が聞こえたんですね。コピーライターはそういった反応に直接触れることはあまりないですから。もちろん斉藤和義さんの表現力があってこそですけど、「自分の歌詞が、こんな風に人の心を動かしているんだ」と思うと、とても嬉しかったです。

では、今後のビジョンを教えて下さい。

現役をできるだけ長く続けたい。そして音楽や歌も含め、広告作りを通じてクリエイティブなことを作る、伝えることに関して、長い間プロフェショナルとしてやってきたので、これからは若い世代に伝えたり、社会に還元していきたいです。

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仕事人として約40年。一倉さんの仕事のモチベーションになっていることとは何でしょう?

広告コピーというと薄っぺらい印象を持っている人もいるかもしれませんが、僕が目指しているのはそういうものじゃなかった。モルツのコピーのように皆さんの生活に溶け込んだり、「きれいなおねえさんは、好きですか」のように人々の記憶に残ったり。「あなたと、コンビに」が今も使われているのも、コピーライター冥利に尽きるというか。皆さんの生活に少しの彩りを添えているのだとしたら、広告って悪いものじゃないと思うんです。

だから今後も広告を作る人間として、できるだけ良いものを伝えて、良いものを残したい。そんな気持ちでコピーを書き続けたいと思います。

あなたの“つくばウェイ”とは?

のびのび生きること。

現役大学生や筑波大を目指す人に一言!

筑波大の良さ、らしさを楽しんで下さい。筑波大は先生と学生の距離が近く、本当に良い大学だと思います。

プロフィール
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一倉 宏(いちくらひろし)
1955年生まれ、群馬県出身。群馬県立渋川高等学校から、筑波大学第一学群人文学類へ進学。1974年に入学したため筑波大学の一期生である。在学中は、日本文学を専攻した。卒業後はサントリー株式会社にコピーライターとして入社。約8年間、勤務したのち仲畑広告制作所へ移動。1990年に独立し一倉広告制作所を設立。同年には東京コピーライターズクラブが選ぶ最も優秀な広告賞であるTCCグランプリを受賞。サントリーモルツのCMでおなじみの「うまいんだな、これがっ。」など数多くの印象に残るキャッチコピーを世に送り出した。2010年には母校・筑波大学のスローガンである「IMAGINE THE FUTURE.」やメッセージソングの歌詞を提供するなどブランディングにも協力する。コピーライターとしてだけではなく、クリエイティブディレクターや作詞家としても活躍している。
基本情報
所属:一倉広告制作所 
役職:コピーライター
出生年:1955年
血液型:O型
出身地:群馬県渋川市
出身高校:県立渋川高校
出身大学:筑波大学
所属団体、肩書き等
  • 東京コピーライターズクラブ     
  • 筑波大学プラチナアソシエイト(活動支援)
筑波関連
学部:第一学群人文学類 1974年入学(一期生)
研究室:日本文学専攻(伊藤博・万葉集)
部活動:文芸サークル
住んでいた場所:1,2年次 平砂宿舎
プライベート
好きなスポーツ:弓道(三段)
座右の銘
  • できることのなかで、いちばんよいことをする

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