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河瀬スライダー

スマホで鍵が開けられる「Akerun」で世界へ

Entrepreneur
2017/08/28
インタビュー
  • 89
株式会社フォトシンス 代表取締役社長
河瀬 航大
(化学類 2007年入学)

鹿児島県種子島に育ち、幼少時代から環境問題に感度が高かった河瀬さん。研究者になろうと筑波大に進学したが、学外活動がきっかけでビジネスの世界に心酔。会社員時代を経て、現在はスマホを使った世界初の後付けスマートロック「Akerun」を開発、そして起業家として活躍している。今があるのは「筑波大での伸び伸びとした学生生活と、それに伴う焦燥感から」というが、その真意とは?

筑波大で「このままではまずい」と危機感を抱いた

筑波大を目指したきっかけを教えて下さい。

研究学園都市ということで先進的なイメージがありましたし、海外でいうとシリコンバレーのように整った環境の中で学べたら面白そうだなと思って筑波大に興味を持ちました。

高校の頃は化学部で光触媒や酸化チタンをテーマにした研究をしていたので、その研究結果を筑波大に見て頂き、理工学群化学類にACで入学。私の関心のあることに共感してくれたことも、入学の決め手になりましたね。

実際に入学されて、いかがでしたか。

期待通り、研究をのびのびとできる環境がありましたし、先生は面白い方が多い。各分野で有名な人も多いですから、「私はこれをやりたい!」と芯を持った学生にとって筑波大は恵まれた環境であるのは確かです。

一方で、のびのびし過ぎといいますか、このままではいけないと思わされたことも事実。私は筑波大の中でもめちゃめちゃ楽しんでいた学生だといえるほど、友人や海外からの留学生とも交流を持つなど充実していました。毎晩、サークルのメンバーと飲み明かして、大学生活を最大限楽しんでいました。しかしそれと同時に「このままでは、何もしないまま学生生活が終わってしまう。」と危機感覚を持つようになって。どんどん外の世界に目を向けるようになりました。

河瀬4

外の世界とは?

つくばは、大学生ばかりで、友人が多く楽しいし、時間の流れがゆっくりで、とにかく居心地がいい。ちょっと外の空気に触れることが必要だなと、早稲田大学主宰の学生団体に参加し、代表を務めるまでに。どちらかというと、そういった学外での経験が私を成長させてくれたと思います。

どういった団体だったのでしょう?

環境問題をビジネスという切り口で考えるサークルです。ビジネスコンテストを1週間の合宿形式で主催し、全国から優秀な学生を200人ぐらい集めて環境に配慮したビジネスプランを提案してもらい、企業に提案する。そういったことをやっていました。

もともと環境問題に興味があったんです。鹿児島県種子島で小学校まで育ち、夏休みは毎日のようにマングローブにこもって「生き物はどうやって生きているんだろう」とか生態系のバランスについて理科研究をするなど、幼少期から「遊び場を守りたい」との意識を強く持っていました。

そのような環境で育ったことで、化学に興味を持ち始めたのですね。

はい。その延長線上に高校での研究、そして筑波大進学があったので、大学で環境問題についての研究を続けることは私にとって予定調和だなと。

そういった点で、せっかく関東まで出てきたんだから何か面白いことをと思っていた私にとって、早稲田大学のサークルとの出合いは刺激的でした。ちょうどTXができた後だったので週に2回は都内に通っていたんですよ。

将来についてはどう考えていましたか?

研究者になりたいと思って筑波大に入学しましたが、色んな人と接するうち、院に入って研究者になる道は、なんだか用意された長いレールを走るような感覚が出てきて。それよりも、ビジネスという切り口で新しいことに挑戦してみるほうが面白いのではないか、私の性格に合っているのではないかと思うようになりました。

筑波にとどまっていては、なかなか気付けなかったことかもしれません。

私の場合はそうですね。結局、やりたいことは頭の中で考えてるだけでは見つからないもので、心も体も動かしてやっていくうちに、「これがやりたかったんだ!」「この課題を解決するために生まれてきたんだ」と気付けるものだと思うんですね。

例えば難民問題を解決したい人は、NPOに参加して海外に行ってみたからこそ問題提起や、自分の使命感に気付けるのではないかと。大学でひたすらインプットすることにそれほどの価値はなく、そこを基礎として行動を起こすことで自分のやりたいことを見つけていく。それが大学にいるうちにやっておいたほうが良いことなのではないでしょうか。

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では、大学でやり残したことはない?

唯一、やり残したことは大学時代に休学でもして、シリコンバレーなどの海外で働いてみたかったなと。学生の頃に起業しても良かったなとも思います。こんなにノーリスクで起業できる時期って、他にはないと思うので。

趣味で開発していたAkerunがバズり起業することに

卒業後は株式会社ガイアックスに入社。

まずは社会人として、ビジネスやIT、テクノロジー、マーケティングについて勉強をしたい気持ちがあり、マーケティングに強いガイアックスに入社しました。その中でコンサルタントとして色々学びながらも、「いつか自分の事業をやりたい」という気持ちは常に持っていましたね。

どんな学びが得られましたか?

学生の頃から色々な活動をしていたので「自分はできる人間だ」と思っていたら大間違い。メールの文言の基本がなっていない、顧客への対応が上から目線だと上司から指摘され、自分はビジネスマナーを知らなかったんだと思い知らされました。

そういった基礎を1から学べたことも良かったですし、1年目で任された新規事業が全然上手くいかなかったことも、自分の未熟さを実感させられた経験となりました。

どんな事業だったのでしょう。

ソーシャルメディアには、企業の商品の口コミが多く落ちています。その声を収集・分析して、商品開発・マーケティングに生かすという事業でしたが、部下の教育も上手くいかず、成果も上げられなくて。でもその失敗から学ぶことは非常に多かったです。

3年半で退社し、起業。

3年半、ガイアックスに籍を置きながら、退社後や週末にはiPhoneアプリを作ってみたり、動画メディアを立ち上げてみたり、色んなことをやっていたんですね。そういった活動が今の会社で提供しているスマートロック「Akerun」につながって起業という流れになります。

どんな経緯で「Akerun」は誕生したのでしょう。

友達同士でお酒を飲んでいる時に「鍵って不便だよね」「スマホで鍵が開いたらいいよね」という話になり、それから3Dプリンターで試作品を作り、秋葉原に行って電子回路工作をするなどを始めました。でも、それも趣味程度で、これで起業しようとは考えていなかったんです。

ところが、一緒にやっていた仲間が家事代行をやっているベンチャー企業のエニタイムズで働いていた関係で、「家事代行とAkerunは相性がいい」と、エニタイムズの社長が“Akerunと提携”というプレスリリースを出したんですね。まだ会社組織にしてもいない段階で(笑)。

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それが起業のきっかけに。

はい。日経新聞さんがそのニュースを取り上げた途端、ホリエモン(堀江貴文)さんやイケダハヤトさんから応援メッセージが届くなど、1日100件以上の問い合わせが来ました。それで「これはポテンシャルがある」ということで起業して量産することにしたんです。

“世界初”と注目を集めました。

後付けで貼り付けるスタイルは世界初だったようで、反響は思いのほか大きかったですね。

これまでの道のりは順風満帆でしたか?

いえ、苦労の連続ですよ。なにしろ億単位でお金がかかる事業ですから資金調達が大変でしたし、モノづくりを創業メンバー6名ですることに限界があったので、工場の人から色んなことを教えてもらいながら、なんとかここまで来ました。

現在、商品としては自信のあるものが出せていて問い合わせは増える一方ですけど、その一方で組織を大きくしていかないといけないなど、色んなフェーズごとに色んな問題が起きています。社員は正社員35名ですが、毎月、新しい人が入っている状態ですね。

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どんな時にやりがいを感じますか。

新しい未来を作っている感覚が持てること、それがやりがいになっています。最近ではオフィスでも、鍵や社員証に代わってAkerunが使われ始めています。そういう現状を目の当たりにすると、「未来を作っている」という感覚が感じられて嬉しいです。

経営に関してのこだわりは?

「ワクワクするかどうか」ですね。意思決定において、経営としてはリスクがあっても、私がワクワクできるほうを選ぶようにしています。

これまでに影響を受けた人物とは?

一番刺激を受けたのは孫正義さんですね。最近では、イギリスの大手半導体メーカーARM社を買収するなど、通信に関する感度が高い方という印象があり、信頼性も高い。弊社では孫さんの貢献者を育成するスクール、ソフトバンクアカデミア出身のメンバーが2人いるんですよ。

筑波大OBも働いていますか?

創業メンバーは私ともう1人が筑波大OBで、今は卒業しましたがインターンとして働いていた人もいました。優秀な学生がいれば、どんどんうちに来て欲しいですね。

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では、今後のビジョンを教えて下さい。

まずはAkerunで、物理的なカギを世の中から無くしたい。その他にも、世の中になかった新しいものをどんどん作って、自分たちが作った商品で世の中を驚かせたいと思っています。

あなたの“つくばウェイ”とは?

自分の意思をどれだけ強く持てる。筑波大で、そのことに気付かされました。

現役大学生や筑波大を目指す人に一言!

考える時間や環境が整っているので、自分とは何か、何をするために生まれてきたのかといった“使命”を見つけて欲しいです。

プロフィール
河瀬プロフィール
河瀬 航大(かわせこうだい)
1988年生まれ、鹿児島県出身。鹿児島県立鶴丸高等学校を卒業後、筑波大学理工学群化学類に進学。在学中は大学サークルの代表を務め、環境問題に関して積極的に活動。卒業後は2011年株式会社ガイアックスに入社し、ソーシャルメディアを活用したマーケティングの最前線で、企業向けに企画・運用・解析等のコンサルティングを行い後にソーシャルリスニング事業を責任者として立ち上げる。2014年には世界初の後付型スマートロック「Akerun」を提供する株式会社フォトシンスを設立。現在、株式会社フォトシンス代表取締役社長。
基本情報
所属:株式会社フォトシンス
役職:代表取締役社長
出生年:1988年
出身地:種子島
出身高校:鹿児島県立鶴丸高等学校
筑波関連
学部:理工学群化学類
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