将来はエンジニアとして企業に勤めようと思い描いていた大学時代。電子部品を見て目をキラキラ輝かせている同級生の姿を見て、自身とのポテンシャルの違いに気付かされた。その後、仲間と起業し、10年間で4社を設立。つくばからスタートした起業家としての10年と、今後の展望についてお話を聞いた。
セブンセンスマーケティング株式会社で代表取締役をしています。地元である静岡県沼津市に本社があり、東京にも支社があります。
事業内容は主に2つで、まず1つめはウェブマーケティングによる販売促進です。例えば、中小企業さんのHPの集客を上げるためにウェブ広告をご提案したり、見せ方を考えるなどのお手伝いをしています。
もう1つは「みえるクラウド ログ」というサブスクリプション型のITサービスを提供していまして、具体的には、会社のパソコンにインストールすると、社員の誰がどのファイルをいつ開いたかが分かる。そのログを集めて分析することで、会社の業務生産性をしっかり上げていくというサービスです。
大学在学中に友人と起業し、家計簿アプリを作る事業をしていたのですが、その時にビックデータって面白いなと思っていて。例えば「Aさんが肉まんとコーラを買った」という情報だけだと面白くはないのですが、「毎週金曜日、月末だけ肉まんとコーラを買っている」となると、いわゆるチートデイだということが見えてきますよね。そこから人となり、働き方が見えてくる。
その経験を通して、何か新しいサービスを作りたいとアンテナを張っていたところ、2年ぐらい前にパソコンのログを見る機会がありまして。「こんなに簡単に、こんなにたくさんの情報が取れるんだ」と驚きました。「これは世界を変える可能性がある」と、サービス化することにしたんです。
筑波大学在学中からITサービスを作りたいと考えていました。僕は高専からの編入学で3年次に工学システムに編入学しましたが、その頃はこれといった夢も目標もなく、卒業後はエンジニアとして大きい会社に入るんだろうなぁと漠然と考えていました。
ところが筑波大に入ってみると、高専ロボコンという大会で優勝したり準優勝したりしている同級生がコンデンサという電子回路の部品を見て、目をキラキラさせていて。僕とは比較にならないぐらい高いポテンシャルを持った友達を目の当たりにして、「この差は一生つき続ける」「僕はどこに向かうべきなんだろう」と考えさせられて…。
エンジニアではなく、良い技術や良いエンジニアを世の中に伝える仕事をしようと。それ以降、ITサービスを立ち上げる機会を伺っていました。
最初の起業は3年次、同級生に誘われて僕を含めた5人で「つくいえ」という部屋探しのポータルサイトを立ち上げました。筑波大学は外周12キロあり、大学近くの部屋を探したくても広すぎて、どう探したらいいか分からない経験を僕自身もしていたので、筑波大の学生に特化した部屋探しのサービスがあったら便利なのではないかと。
僕は営業として不動産会社を回ったり、学生の要望を聞きながらそれをサービスに反映するといった役割を担当していました。
起業というと大変なイメージがあると思いますが、スタートは想像していたよりも簡単に立ち上がって順調に進みました。自社のサイトも無い中、パワーポイントと資料だけを持ち歩いて不動産会社に営業にいき、すぐに数社受注できて。
営業ノウハウは、まず第一声で「筑波大学生です。店長いますか」。すると、すぐに店長が出てきて直接話を聞いてくれました。つくば周辺の不動産会社も筑波大学生によって経営が成り立っている部分がありますし、今までの先輩方がしっかり町とつながっていた信頼関係があるからこそ、すぐに受け入れられたのかもしれません。
不動産会社の方に契約書の綴じ方を教えてもらったり、優しく指導して頂けた経験は後々の起業にとても役立っていると思います。
目標は月に50万円、5人いるから1人月10万円あればそれぞれの家の家賃と生活費が払えるだろうと考えていましたが達成できず。1年後に他の企業に売却しました。
でも会社を立ち上げて売却するという経験が、普通の大学生の僕でもできるんだという発見がありましたし、その成功体験は大きな自信になりました。最初の一歩目として、とても貴重な経験だったと思います。
つくいえの経営していた会社で、先ほど少しお話した家計簿の事業を立ち上げました。家計簿の事業に対して本気で4−5年向き合ったのですが、なかなかうまく行かずに一度会社を退職し、その後は大企業に入ったり、他の会社を立ち上げたりしました。そんな中、数年前に、仕事のお客さんで高校の先輩も関わっていた会社が、統合しセブンセンスグループを立ち上げることに。そこでそのグループ内にセブンセンスマーケティングを先輩と一緒に設立することになったのですが、それには、Yahoo!とLINEが合併するという全く予想していなかった出来事が起こったことも影響しておりまして。
「会社を大きく切り替えるのは、経営者としての1つの道なんだ」と気付かされたんです。それで「大きな一手を打ってみよう」との思いでセブンセンスマーケティングを設立したのが、今に至った経緯です。
4社です。本当は1つの会社を長く続けているイメージだったのですが、人生は想像した通りに進むわけもなく、会社をやっている中で違うなと感じて離れてみたり、この人と組んでみたいと思ってやってみたり。その時々の出会いに都度、動かされながら会社を立ち上げてきたのが素直な気持ちです。
4社の起業の中でも、私の中では結構違いがあります。例えば、起業と一言でいってもメルカリになる、楽天を作るというメジャー級の起業もあれば、草野球的な起業もあって。4社中2社は草野球のような感覚でしたので、メジャーになるぞ!大きくなるぞ!というよりは、この友達と一緒にやりたいという気持ちだったり、会社作ってみたいという気持ちで会社を創業したりもしています。
1社目はまさにメジャーを狙っていこうという強い思いで起業した会社でした。いま頑張っている「みえるクラウド ログ」もかなり気持ちを込めて作ったサービスですね。しっかり社会の役に立っていると思えるレベルにまでサービスを伸ばしていきたいと思っています。
現在、50社ぐらいのお客様がいまして、「こういったものを求めていた」と言って頂くこともあり、ポテンシャルを感じられるサービスに育っていると感じます。
2020年に立ち上げてから2年間は、このサービス専任の社員は私1人でしたが、昨年から数名仲間が増えています。特に昨年9月から高専時代の同級生が入社してくれまして。同じ思いを持った仲間が加わったことで嬉しさと同時にプレッシャーも感じながら、この事業に対してしっかり責任を持ってやっていこうと、さらに意識が高まっていますね。
20歳で起業した頃は、一発当ててやろうと宝くじを買うような気持ちでしたが、実際そんなにうまくはいかなくて。スポーツも同じでしょうけど、才能だけに頼るのではなく、毎日あるべきものに向き合って毎日の課題を乗り越えていくことが大事だと感じます。
起業をすると、予想外の問題に巻き込まれそうになるようなこともありますし、一方で提携のお話を持ち掛けて頂くような話が来たりと、色んな事が起こります。そんなことに1つ1つ向き合っていくことが大事だと、そんなことをこの10年で学んだような気がします。
筑波大の山海嘉之教授がロボットスーツHALの研究をされている記事を読んで感動し、ロボットが未来を作る現場に関わりたいと筑波大を受験しました。編入学の場合は数学、物理、英語の三科目の試験と、口頭試問で受験ができました。
先生の授業を受けることはできましたが、事業自体に関わる事はできませんでした。というのも先ほどお話したように、入学してすぐにポテンシャルの高い同級生に出会い、そこからは起業の道に進みましたから。
でも今もロボットスーツHALを始めとしたロボットの世界にも憧れがあるので、違った形で今後関わっていけたらいいですね。
私ほど学校に行っていない人はいないんじゃないかな(笑)。3年次に編入し、その8月には起業して4年次はフルタイムで働いていましたから。ギリギリ授業には出ているといった感じでした。
大学の周りには遊びも少なくて、何か頑張りたいことがあったら他のことに惑わされずに没頭できる。僕の場合は起業でしたが、周囲に惑わされずに頑張れたのは筑波大の環境のおかげだと思います。
「つくいえ」のアルバイトとして手伝ってくれた筑波大の学生とは今もつながっていて、一緒に仕事することもあるんですよ。「つくいえ」は会社組織とはいえ、ある意味サークルのような存在で、色んな学部の人と出会えることも刺激的でした。
仲の良い後輩が現社長になったので、この2年ぐらいお手伝いしているんですよ。自分で作ったサービスにまた関わることができて感慨深いですし、今のサービスは僕がやっていた頃に比べると何倍にも成長していて嬉しい限りです。
「みえるクラウド ログ」が、世の中で価値があるサービスになり、世の中が豊かになること。それが目の前の目標です。
長期的には、チャレンジする人たちを応援すること。2年前から静岡で「若者チャレンジファンド」を運営していて、静岡に関わりがある大学生に10万円を配り、やりたいチャレンジに対しお金を遣ってもらうという事業をやっています。
学生を応援したい地域の企業の方にご出資頂き、これまで2回の開催で12チームに合計約120万円をサポートしました。今年は3回目のイベントが開催されます。
僕自身、つくばというチャレンジできる環境で「つくいえ」を立ち上げたことが人生の大きな一歩であったように、静岡でもそういった環境を作りたいからです。
「つくいえ」を作った際、起業は危ないからやめておいたほうがいいといったネガティブな意見はほとんどなく、不動産会社さんが前向きに協力してくれたことが原体験として強く残っているので、静岡県も、つくばのように優しい町、優しい空間、優しい大人がいる、チャレンジを応援する世界にしていきたいですね。
古いお茶の缶に書いてある、蘭字という文字でデザインしたTシャツを作ったグループがいまして、そのTシャツはとある有名な小売店さんで販売もしたりしていました。そういった結果は、まずチャレンジをしないと生み出されないですから、学生さんの課題がお金なんだったら、お金を支援することでその方々や地域の10年後20年後のチャレンジを押し上げたいです。
若者チャレンジファンド自体の成功が大事なのではなく、学生さんが最初の一歩を踏み出す経験をすることで次のチャレンジをしやすくする。要は僕にとっての「つくいえ」のような経験を皆さんにしてもらいたい一心で、若者チャレンジファンドに取り組んでいます。
つくばの皆さんに優しくされたからこそ、今度は僕が優しさを増やして世の中に返していきたいですね。
前向きに考えることは意識していますね。食べ物を美味しいか不味いかで判断すると幸せになれないので、美味しいか、すごく美味しいかの二択にすると全部美味しいになる、といったことであるとか。
悩むという言葉を極力使わないこと。悩むことは結論を出すつもりがないもので、人生が不幸せになるネガティブなもの。一方で、考えることは前向きな結論を出す行為で、幸せになるために必要なものだと思います。
同じ事象でも、前向きな言葉を使って考えるほうが幸せになれると思うので、そういったことをモットーにしています。
どんどんチャレンジしていいという心持ち。チャレンジすることで見えるものがあり、チャレンジ自体の成功もあります。うまくいかなかったら引いてみたり…といったことをし続けることが、自分を成長させるために大事なことだと思います。
実は第一希望ではなかったのですが(笑)、筑波大にいったからこそ起業の可能性に気付かされ、起業するに至った。想像していたよりも素晴らしい経験に出合えたので、お勧めの大学です。
所属: | セブンセンスマーケティング株式会社 |
---|---|
役職: | 代表取締役 |
出生年: | 1991年 |
血液型: | O型 |
出身地: | 神奈川県南足柄市 |
出身高校: | 沼津高専 |
出身大学: | 筑波大学 |
学部: | 理工学群 |
---|---|
研究室: | 計算知能・マルチメディア研究室 |
住んでいた場所: | 天久保3丁目→春日4丁目 |
行きつけのお店: | とりどり |
趣味: | 漫画 |
---|---|
年間読書数: | 50冊前後? |
心に残った本: | LIFE SHIFT(ライフ・シフト) |
心に残った映画: | スラムダンク |
好きなマンガ: | スラムダンク、キングダム |
好きなスポーツ: | バスケ |
好きな食べ物: | お寿司 |
嫌いな食べ物: | チーズ |
訪れた国: | 中国、韓国、インドネシア、タイ、ハワイ |
大切な習慣: | よく寝る |
口癖は?: | やる気あります。 |
TSUKUBA WAYに関するお問い合わせはこちらから!
お問い合わせ