大学、大学院とひたすら研究に没頭していた筑波大生が、いかに社会で働いているかは非常に気になるところ。今回紹介する七辺寛幸さんは、世界1の鉄鋼メーカーの技術職として24時間操業の工場で勤務し、この春で4年目。仕事のやりがい、そして社会人に必要なことなど自身の経験を、生き生きとした表情で教えてくれた。
高校のセンター試験の結果を受けて、どの大学が自分のレベルに合うかを考えた時に、外国人の留学生が多くスポーツが盛んな筑波大が面白そうだなと。入学したら、色んな人に触れ合えそうだと思ったのが理由の1つですね。
もう1つは、私が専攻をした理工学群応用理工学類の紹介文に「将来、進路を選ぶ上で道を狭めるのではなく、色々なところを視野に入れて選べる学部だ」と書いてあって。当時はまだ車関係の仕事に就きたいだとか、機械をいじりたいなど具体的にやりたいことが決まっていなかったので、“将来を狭めない環境”で学びたいと思って筑波大を選びました。
岡山県出身の私からすると、筑波大のある関東は都会というイメージだったので、入学した時は正直、「想像していたより田舎だな」と思いました(笑)。地元が遠かったのでオープンキャンパスにも行けず、雑誌で紹介されている写真のイメージが強かったのかもしれません。
物理学を中心に数学、化学、生物学を学んでいました。高校時代から物理が得意だったので、きっと私に向いているだろうと自己分析していましたが、入ってみるとやはり好きなことを学ぶ楽しさがありましたね。
部活の軟式野球部です。もともと野球をやっていたので大学でも続けよう、ただ授業中心の生活が送れるようにと軟式へ入部しました。硬式野球部はプロも出るぐらいの強さなので、勉強との両立は難しいだろうと。
一番印象に残っているのは、高校の時のように指導者任せではなく、部員が集まってどうやったら勝てるだろう?と試行錯誤しながら試合に臨んだことですね。積極的に自分で考えて提案をするようになりましたし、部活を通して自立心が養えたことが良かったと思います。3年の時には北関東大学軟式野球部連盟の北関東代表に選出されました。
応用理工学類の学生の9割方は大学院にいくので、皆がいくならいこうという気持ちと、学部ではベースの教養の部分しか学べていない実感があったので、もっとこの学問を追究してから社会に出たいという気持ちが強かったです。技術的な職に就きたい場合、修士卒のほうが有利ということもありますし。
金属の基盤の上に、分子や原子といった小さいものを並べて顕微鏡で見るという研究をしていました。それらがどういう風に並ぶかを観察することが重要で、金属の上に有機分子をふらせると、自然と規則的な配列をするその配列を調べていました。皆さんに分かりやすく説明すると、半導体を作り出すような研究といったところですね。
大学時代にも考えていましたけど、「自分は何が一番したいんだろう?」というのが明確に分からなくて、やっぱり絞り込めませんでした。大学院に進んだあとも、ひたすら目の前の研究に没頭して「この延長線上に、きっと何かが見つかるだろう」という気持ちでいましたから、いざ就職活動をスタートさせるまで進路についてはぼんやりとしていた、というのが正直なところです。
就職活動に臨む際にも、まだやりたいことが明確ではなかったので「就職活動を通して、自分のやりたいことを決めよう」と、車、電気、化学など色んな業界の現場を実際に見てみたことは良い経験でしたね。
今の会社に入りたいと強く希望するようになったのは、工場見学が決め手です。他の工場と比べて、この工場のダイナミックさに勝てるところはないと言えるほど、圧倒的な大きさを誇っているんです。そのすごさに惹かれて「ここで働きたい」と思うようになりました。
工場の操業は日々24時間行われていて、24時間の中でトラブルがあるとその対応をしたり、データを見ながら、もっとより良い鋼を作るためにどう作業手順を変えていったらいいかといったことを常日頃考えています。
入社したばかりの頃は、どんなトラブルに関しても先輩たちが対処法をすでに知っていて、それを実践すればいいのだろうと考えていたのですが、実際に働いてみると誰も経験したことがないような初の事象が起こることが結構あって。予期しなかったような新しいトラブルが常に起こるので、何を調査すればいいか分からないゼロのところから自分なりに考えて、改善提案を出し解決に持っていくのが一番の苦労ですね。
しかも私が解決しなければ工場の生産量が落ちてしまいますから、正直プレッシャーもすごいです(笑)。
年々任される仕事のレベルが上がっているので、プレッシャーはむしろ重くなっているかなと。ただ、そのぶんやりがいも年々増していると感じます。そんな中、操業トラブルを解決することの達成感や、工場で働く人から「ありがとう」と言われることが大きなやりがいにつながっています。
私がそうでしたが、やはり目で見て感じてもらうために、まずは工場見学に来て欲しいですね。世界一といえるほどの規模の会社で作られている鉄を実際に見てもらえれば、きっと魅力は伝わると思いますし、鉄を作るためにどれだけ多くの人が関わっているか、そこで働いている人がどれだけ生き生きと働いているかは、どんな資料に目を通すよりも明らかだと思います。
私個人の意見ですが、修士に進んで、研究が好きだと感じている人は技術職に向いていると思います。だからといって研究が嫌いだから向かないとも言い切れないんですけど、技術職はデータ分析をしたり、パワーポイントを作ったり。研究でやることと似た部分があるので、そういったことが好きな人は向いているのではないでしょうか。
それと、これはどこの会社でも求められることですが、元気で社交的な人は重宝されると思います。実際の仕事では寡黙な職人タイプより、しっかり人とコミュニケーションが取れる人が求められていると感じます。
そうですね。研究室だとせいぜい4名ぐらいに連絡をすれば話は通りますけど、うちの会社だと10人、20人に事前連絡を入れておく必要があります。あとで「聞いていない!」と言われてしまうと自分のやりたいことが実現できないので、あらかじめ連絡を入れておいて、こういう風に決まりましたと報告をする。そういった社会人に必要な“ほう・れん・そう”ができることは大事だと思います。
うちの会社でいえば体力も必要かもしれませんね。工場も大きければ敷地も広いので、普段の移動や、日常点検をする時に歩き回るだけでも体力を消耗しますから(笑)。
所内にソフトボール場や体育館もあるんですよ。しかも社内イベントが充実していて、なわとび大会を開催したり、所内にコースを作って駅伝大会をしたり。どこか筑波大に似た雰囲気があると思います。
修士で学んだ“本質的なことを見極める力”が今に活きていると思います。例えば研究をして結果が出た時、「どうしてこういう結果になったんだろう?」と考え抜いてきた経験がとても重要で、実際に覚えた知識や技術よりも役に立っていると感じます。
それと、大学院で家族のように付き合ってきた友人たちの存在を有り難いと感じますね。特に1学年上と1学年下の先輩、後輩とは今も年1,2回は会っていて、研究室での思い出話に花を咲かせたり、お互いの仕事の話をして刺激を与え合っています。
「これがやりたい」と思ったことを実現する、そんな仕事ができる人になりたいですね。例えば品質改善業務についてですが、鉄は圧延した際にどうしても表面に傷が出てしまいます。その傷をどうすれば減らせるかを自分で考えて実行できるようになることが、今一番身近な目標です。
つくばという広い敷地で色んなことに挑戦できる自由さが、自立心を養ってくれました。そのため、私のつくばウェイは、自ら考え行動することです。
後悔のないように大学生活を送って欲しい。そして企業を選ぶ時に、自分のやりたいことをしっかり見定めて選んで欲しいと思います。
所属: | 新日鐵住金株式会社 |
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役職: | 技術スタッフ |
出生年: | 1989年 |
血液型: | B型 |
出身地: | 岡山県倉敷市 |
出身高校: | 倉敷青陵高校 |
学部: | 応用理工学類 |
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研究室: | 佐々木山田研究室 |
部活動: | 軟式野球部 |
住んでいた場所: | 一の矢宿舎、春日4丁目 |
行きつけのお店: | めし食うべ、龍郎 |
ニックネーム: | べーやん |
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趣味: | 野球 |
特技: | バク宙 |
尊敬する人: | イチロー |
年間読書数: | 5冊 |
心に残った本: | Steve Jobs |
心に残った映画: | 君の名は |
好きなマンガ: | ワンピース、ダイヤのA |
好きなスポーツ: | 野球 |
好きな食べ物: | ラーメン、焼き肉 |
訪れた国: | 4カ国 |
大切な習慣: | 歯磨き |
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