つくばウェイ 〜 筑波大OB & OGの生き様をみちしるべに 〜TSUKUBA WAY ロゴ画像

  1. つくばウェイinstagram
  2. つくばウェイtwitter
  3. つくばウェイFacebook
kuri_slider

「おとりよせネット」の立ち上げから22年。50代になった今も新しい事業を立ち上げるなど、いつもゼロスタートできる自分でいたい

Entrepreneur
2025/07/14
インタビュー
  • 191
アイランド株式会社 代表取締役
粟飯原理咲
(第一学群社会学類 / 1996年入学)

自身が立ち上げたウェブメディア『おとりよせネット』『朝時間.jp』などの公式SNS総フォロワー数はなんと約700万人。成功の裏側には、会社員時代に得た知識と経験、そして自分の好きなモノ・コトへの探究心がある。「人生は壮大な伏線回収」と朗らかに話す、彼女の仕事への想いを聞いた。

「地に足の着いたミーハーでいること」が私のモットー

つくばウェイとしては初めて、2度目の登場になりますが、さらなるご活躍をされている粟飯原さんにお話をうかがっていきます。1度目のインタビュー(https://tsukubaway.com/column/entrepreneur/2195)からのご自身の変化や、更に成長したと感じるところはありますか??

前回の2017年のインタビューから8年。「人生で最大の挫折」だと感じた経験もその間にあり、今回好きな言葉にあげた「万事塞翁が馬」をしみじみその通りだと思うように。でもその挫折を数年かけて乗り越えて、その経験があったからこその幸せにも出会うことができました。
そのおかげで、人生や仕事での局面局面を点ではなく線や面でとらえることができるようになったこと、そして、人の痛みに前より寄り添えるようになったことは大きな成長だと思っています。

現在のお仕事について教えて下さい。

アイランド株式会社の代表として「みんなの暮らしをもっとワクワク、心地よく」をキーワードに、8種類のウェブサービスを展開しています。すべてのメディアの公式SNSフォロワー数を合計すると、約700万人になります(2025年6月現在)。

ものすごいフォロワー数ですね。どんなサービスを提供しているのでしょう?

代表的なサービスは3つ。まず、2003年の会社設立時に始めた”おとりよせネット”はインターネットで購入できる全国の美味しい逸品をご紹介するメディアで、九州の明太子屋さんから北海道のチーズ屋さんまで、様々なお取り寄せグルメを取り扱っています。

昨今、少子高齢化も進み、各地域の店舗さんが、その地域だけで経済を成り立たせるのは難しくなっていますから、美味しいものに興味があるユーザーさんとマッチングする。その架け橋になれるように意識しています。

約22年も続いているメディアなのですね。

立ち上げ当初は“お取り寄せ”という言葉が一般的ではありませんでしたし、インターネットで食品を買う人はほとんどいなかったんですよ。
kuri05

先駆け的存在ですね。その他のメディアは?

“フーディストノート”は、SNSで料理や食に関して発信している方々を”フーディスト”と呼び、約3万人の方にご参加頂いています。その中でも”トップ・フーディスト”と呼ばれる方は、SNSのフォロワー数が100万人を超える方もいらっしゃって。

日々の料理やオリジナル料理のレシピを紹介する人もいれば、パンが大好きでパン料理を紹介している人、お子様のお弁当を紹介している人など、食を通じたライフスタイルを切り取ってお伝えしています。

では、3つめのサービスは?

2006年に立ち上げた”朝時間.jp”という、朝型のライフスタイルを提案するウェブメディアです。

LINEのお友達登録者数は約200万人で、朝ご飯におすすめしたいメニューや腸活レシピといった“食”に関する情報を発信したり、朝のすき間時間を利用した英語学習として、英語のフレーズをご紹介したり。そこから派生して、今年6月には『AI朝活!じぶんごと英語を身につける』(朝時間.jp制作協力)という書籍も発売されたんですよ。

あとはストレッチやヨガ、美容や洋服など様々なテーマでメールマガジンを構成し、朝6時に皆さんにLINEを配信しています。

朝6時ですか⁉

LINEのご担当者さんから「朝6時にLINEを送って怒られないのは、朝時間.jpさんぐらいですね」と言われました(笑)。

朝時間.jpは、「朝起きてすぐの時間が充実すると、その日一日が上手くいくような気分になる。そういう毎日が続くと人生が楽しくなって、豊かになる」というコンセプトなので、朝時間を充実させたい登録者の方々に、朝の活動前に情報をお送りしています。

おそらく、朝時間の過ごし方だけに特化して約20年続いているメディアは、うち以外に無いのではないでしょうか。

どのサービスも着眼点がユニークですね。2003年に会社を立ち上げたきっかけは?

人生って壮大な伏線回収であり、わらしべ回収的なところがあると思うんですけど、まず最初のコンテンツである“インターネットを使ったお取り寄せ”というアイディアは、私の趣味である“食べ歩き”がきっかけになっています。

当時はまだブログがない時代で、食べ歩きしたグルメの情報を、ただ趣味としてメールマガジンで発信していたら、口コミで3万人の人に読んでもらえるようになり、本を出版したり、テレビ番組に出させてもらうようになりました。

ある日、メルマガ読者の方に「手土産で何か良いものはありますか」という質問を頂いて。お取り寄せに特化したメディアの可能性を感じるようになりました。

読者の質問がきっかけで“お取り寄せ”に注目されたのですね。

はい。もうひとつの伏線は、新卒で入ったNTTコミュニケーションズで、オンラインショッピングのシステム構築の仕事をしていたことです。

当時はまだインターネットが普及していない時代で、Amazonも日本に上陸していなかったので、実証実験という形でユーザーさんの自宅にパソコンを送付し、インターネットにアクセスしてもらうという実験をしていました。

その仕組みに関わったことで、「オンラインショッピングはこれから絶対広がっていく」「インターネットで食品が買える時代が来る」と確信しました。

点と点がつながったのですね。

そうなんです。NTTコミュニケーションズでは、その他に電子マネーの実証実験をするなど仕事としては面白かったんですけど、インフラの仕事よりもコンテンツに関わる仕事がしたいと思い立ち、リクルートに転職。

All Aboutという生活総合情報サイトのマーケティングプランナーにとして、ウェブサイトのグロースの仕方を学び、2003年に会社を辞めて起業しました。

起業してから印象に残っている出来事は?

起業して22年の間に色んなことがありましたが、この4月に新しいチャレンジとしてアイランド・マーケット、略して”Aima(アイマ)”というオンラインストアを立ち上げたことは、私にとって大きな出来事でした。

それは、なぜでしょうか?

アイマは、私共のメディアを運営している編集スタッフや、そこでご一緒しているインフルエンサーさん、専門家の皆さんがお気に入りのものを販売するライフスタイルストアなのですが、起業当時と違うのは、今、私は50代ということです。

それが今回の立ち上げを特別なものにしていて、「自分が50代になっても、まだ新しいことに挑戦できる」「何歳になっても初心に戻って、ゼロからスタートできるのは幸せなことだ」と感じたんです。

長年、トップとして走り続けてきたからこその気付きですね。

そうですね。しかも私が新しいメディアを始めたことで、10年以上ご無沙汰になっていた方たちが「また何か一緒にやりましょう」とご連絡を下さるなど、これまでのご縁がすべてつながっていることを感じられたのも、嬉しい出来事でした。

新しいことに挑戦したからこそ、実感できたこと。

今は1つ注文が入るだけで、みんなで「ワー!」と盛り上がるんです。立ち上げ当初に抱いていた「楽しい!」という気持ちをあらためて思い出しましたね。

仕事をやる上で大事にしていることを教えて下さい。

就職活動の際に、自分で作った座右の銘がありまして。「地に足の着いたミーハーでいること」という言葉をモットーにしています。

ミーハーという言葉は悪い意味で捉えられがちですけど、世の中の新しい動きにアンテナを張っているからこそ、新しいアイディアを思いつくことができます。その上で、きちんと地に足を付けてサービスにしていく。これはメディアを使ったビジネスにおいて、とても必要な要素だと思います。

就活の際に考えたというのは、すごいですね。

就活で座右の銘を聞かれたら答えようと思っていましたが、まったく聞かれずに終わりました(笑)。

「万事塞翁が馬」も好きな言葉です。1つ1つの失敗や成功にとらわれ過ぎず、すべての出来事は次への伏線であり、ドラマのストーリーの1つとして捉えておく。すると、ビジネスをサスティナブル的に長く続けていけると思います。
kuri01

大学時代、20種類ぐらいのアルバイトを経験し、”働く”ことに向き合った

ここからは大学時代のことについてお聞きしたいのですが、どのような経緯で筑波大を目指したのですか?

小学生のとき、つくば万博に行ったことがきっかけです。宇宙都市、未来都市をテーマにした万博に心を撃ち抜かれて、地元の大阪に帰った後も「つくばは素敵!」というイメージを持ち続けていたんですね。

受験を考え始めた高校生の時に、社会学やマーケティングについて専門的に学べる学部を調べたら、当時は一ツ橋大学と筑波大しかなくて。それだったら自分がワクワクさせられた、つくばに住みたいと思って一般受験で入学しました。

でも住んでビックリ、つくばは全然、未来都市じゃありませんでした(笑)。

たしかに(笑)。大学時代で印象深い出来事や、今の自分に影響していることはありますか。

大学1年次に父親と大喧嘩をして、生活費が止められたことがあって(笑)。その時、アルバイトを20種類ぐらい経験したのですが、それが“働く”ことを考えるきっかけになりました。

「世の中にはこういう仕事があるんだ」とか、自分にとっての向き不向きを、社会人になる前に知れた良い機会だったと思います。

印象に残っているアルバイトは?

ケーブルテレビのキャスターの仕事ですね。番組制作からキャスターまでやらせてもらっていたので、メディア作りという点で今につながっています。

卒業論文も女性誌『クロワッサン』というメディアをテーマに研究しましたし、その大学時代の経験が無ければ、メディアの仕事に就こうとは考えなかったかもしれません。

どんな卒業論文だったのですか。

『クロワッサン』という雑誌が、日本の女性のライフスタイルにどんな影響を与えてきたかの研究でした。

もともとウーマンリブという女性の権利や、自立した女性を日本に生み出そうというコンセプトで創刊された雑誌でしたが、時を経て、女性のライフスタイルを豊かにする雑誌に変わっていく。その背景には、女性のキャリアや人生には“ライフスタイル”が密接に結びついている、という内容の論文でした。

女性のキャリアにライフスタイルが結びついている、というのは?

例えば男性誌の場合、キャリアを築いた男性は、どんな逆境を乗り越えて成功したのか、そういったストーリーを紹介しているものが多いのですが、女性誌の場合は、キャリアを築いた女性がどんな暮らしをしているか、ライフスタイルに注目しているものがほとんどなんです。

こんな素敵なお家に住んで、こんなお料理にこんな器、ファッションや美容はこんな感じといった“暮らし”に焦点を当てている。女性読者が気になるのも、そういったライフスタイルなんですよね。

なるほど。

女性はキャリアを築くだけでなく、トータルの人生が幸せになることを求めているんだなと。その研究で学んだことは、今の仕事に役立っていると思います。

筑波大にいって良かったと感じることは?

今は都心へのアクセスが良くなりましたが、当時は都心から切り離された環境だったので、情報におぼれず、自分と他人を比較せずに自分自身と向き合えたのが良かったです。

自分のやりたいことに没頭できる環境。

そうですね。東京にいたら、他の子は企業でインターンしている、どうしようとか。情報が多いから悩んでしまいそうですけど、筑波大は周囲に振り回されず、自分の好きなことをとことん追求できる環境ですよね。

そういう環境だからこそ、友達とはものすごく濃く付き合えましたし、いまだに大学時代の友人と深く付き合っているので、それは筑波大だからこそだと思います。
kuri02

今後の目標を教えて下さい。

いくつになってもゼロスタートできる自分でいたいし、いくつになっても仲間と一緒に「面白いことやろうよ!」と言える自分でありたいですね。

私は“Doing”より“Being”を大事にしていて。Doing=何をするか、何を成し遂げるかより、Being=自分がどういう状態でいるかが大事。仕事でも何でも、いつもワクワクしていたいし、毎日楽しんでいたいという気持ちで自分の人生に向き合っています。

経営者として具体的に考えていることはありますか?

これからAIで時代が変わると思うので、AI時代に求められるサービスは常日頃、考えていますが、その一方で、人と人とがリアルにつながるサービスを提供していきたいなと。

都内にキッチン付きのイベントスペースを持っているので、リアルな接点が持てる場をどんどん作っていきたいと思っています。

粟飯原さんは常に表情が明るいので、話を聞いていて、すごく元気がもらえます。

ありがとうございます。たとえ時には“カラ元気”だとしても、元気でいることを意識していたら、きっと人生が豊かになるのではないでしょうか。

あなたの“つくばウェイ”とは?

自分を信じること。筑波大は、自分の好きなことに忠実になれる環境ですが、迷った時も、自分自身の選択を信じられる――そういう力が身についたように思います。

現役大学生や筑波大を目指す人に一言!

4年間、つくばで過ごせることはプライスレス。そこで出会った仲間と大学生活を満喫して欲しいですね。
kuri04

粟飯原理咲さんが所属する
企業紹介はこちらから
企業紹介ページへ
プロフィール
kuri_profile
粟飯原理咲(あいはらりさ)
1974年、大阪府出身。幼少期に訪れたつくば万博をきっかけに、筑波大学への進学を決意。在学中は約20種類のアルバイトを経験し、社会の仕組みや“働くこと”への興味を深める。卒業後はNTTコミュニケーションズでオンラインショッピングの実証実験に携わり、インターネットの可能性を体感。その後、リクルートに転職し、マーケティングやWebメディア運営を学んだのち、2003年に独立しアイランド株式会社代表取締役に就任。 食とライフスタイルに特化したウェブメディアを次々と立ち上げ、SNS総フォロワー数は約700万人(2025年現在)。“地に足の着いたミーハーでいること”をモットーに、常に時代の流れに敏感でありながら本質を捉え、「DoingよりBeing」を重視。年齢を重ねても挑戦し続ける姿勢で、メディア業界に新たな価値を創造している。
基本情報
所属:アイランド株式会社
役職:代表取締役
出生年:1974年
血液型:0型
出身地:大阪府豊中市
出身高校:大阪府立北野高校
出身大学:筑波大学第一学群社会学類
筑波関連
学部:第一学群社会学類
研究室:社会学専攻
部活動:FOREST(テニスサークル)
住んでいた場所:天久保
行きつけのお店:チムニー、COCOS
プライベート
ニックネーム:りさ
趣味:読書
年間読書数:50冊くらい
心に残った本:赤毛のアン(モンゴメリ著)
心に残った映画:プラダを着た悪魔
好きなマンガ:ベルサイユのばら
好きなスポーツ:パドルテニス
好きな食べ物:麻婆豆腐、桃、チーズ
訪れた国:10か国くらい
大切な習慣:朝起きてすぐに日記を書くこと
口癖は?:素敵!
座右の銘
  • 地に足のついたミーハーでいること

New Column

Facebook