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山田将平スライダー

子どもも大人も挑戦できる環境を日本に広げていく

Professional
2019/10/28
インタビュー
  • 141
認定NPOカタリバ マイプロシェクト事務局
山田将平
(人文・文化学群比較文化学類 2010年入学)

「何かを成し遂げたいが、何をしたらいいか分からない」――多くの人と同様に、10代の頃はそんな気持ちを抱いていた。しかし、その気持ちがあったからこそ筑波大へ進学し、現在、高校生の“やりたい”を実現する認定NPO法人カタリバ(以下、NPOカタリバ)で働く原動力となっている。現在、マネージャーとして推進するマイプロジェクトは学校、地域の団体を巻き込んで大きな広がりを見せ、未来を創造できる高校生を育んでいる。

高校生のサポートに集中するため、大学を休学

筑波大を目指した経緯について教えて下さい。

中学時代まではサッカーに打ち込んでいましたが、高校に進学してからは「いまやっていることにどんな意味があるのだろう?」「もっと自分にとって意味を感じられることをやってみたい」と思うようになりました。

そんな思いで進路を考えた際、筑波大の人文・文化学群に比較文化学類というものがあるのを知り、ここでなら「自分にとって意味あること、やってみたいと感じることに取り組める環境をどうつくれるか」が学べそうだと思いました。

大学でどんなことを学びましたか?

自分の考えたいことを考えていた、研究していた存在に出会えたことは大きかったですね。
大学の授業を通してフランスの思想家、フーコーの存在を知ったり、学類を超えて教育学類や社会学類の授業を受けたりする中で、視野が広がったように思います。

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印象に残っていることは。

大学で色んな知識や観点は得られましたが、どうしても机の上で議論することが多いので、それを実際にやっているところを見てみたいという思いがかき立てられ、中高生の学習支援を行うボランティアに行ったりしました。

でもボランティアだと1日、2日、長くて一週間の関わりが精一杯なので、もっと長く関わりたいという気持ちが積み重なり、4年次に都立高校で週3時間授業を受け持ったことがターニングポイントになったように思います。

どんな授業を受け持っていたのですか。

学生団体と学校が協働し、高校生が作りたい未来に向けてプロジェクトを行うことを支援する授業で、高校生をサポートする役割を担っていました。

高校生が自らのやりたいことをピュアに追い求めてみる経験は、これからの時代に必要だと実感させられた良い機会でしたし、僕自身、このプロジェクトに集中するために大学を休学しました。

周囲が就職活動を始める頃に休学。迷いはなかったですか。

留学していた友達が多かったので、1年留学するのと変わらないかなと。モヤモヤしたまま就職するよりは、一度自分のやりたいことにチャレンジしたほうがすっきりするかなという思いでしたね。

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行動力、決断力がありますね。

いや、3年までは普通に授業を受けて図書館にこもって勉強して、週に一回のアルバイトをして、自炊して……という平凡な生活を送っていましたよ。楽しみといったら、美味しいお店を見つけるぐらいで(笑)。

そういった生活を送る中で、チャレンジしたいことへの出合いが。

そんな生活を続けたことで、「このままでいいのかな」という気持ちが芽生えたのかもしれないですね。筑波大は学びたいこと、やりたいことについて調べるには良い環境ですし、大学生は「違う」と思ったらすぐ戻れる立場だからこそ、挑戦できたというのはあると思います。

卒業後の進路は?

チャレンジする高校生をサポートする取り組みに可能性を感じ、「こういったことを仕事にできたら面白いな」と起業してNPO法人を立ち上げようと考えましたが、現実問題、売り上げを上げられないかもしれないと。そんな時に、現在勤務しているNPOカタリバで非常勤の採用が出たので就職することにしました。

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NPOというと、低賃金で志ベースで働くイメージですが。

カタリバは“ミッション・オリエンテッド”といって、こういう未来を実現するためにこの活動をします、そのために収益を得ますといった構造なので、そこに違和感がなかったというのが就職するにあたって大きな決め手になりました。

僕自身、自分が実現したい未来のために時間を使いたいタイプなので、自分の性質と折り合いがついたのだと思います。

給与的にも平均年収程度の水準はあるので、高年収でも自分が納得しにくい仕事をするよりは、やりがいも持ちやすいと感じています。

子どもたちが成長していく姿を見ることが喜び

現在のお仕事について教えて下さい。

カタリバは、「どんな環境に生まれ育っても、未来をつくりだす力を育める社会」をつくることを目指し、「意欲と創造性をすべての10代へ」届ける活動をしています。そのために高校と連携して、高校の中に創造的な場を作ったり、放課後に中学、高校生が色んなチャレンジができる場を作るなどしています。ほかにも災害時の支援、被災地支援、貧困や不登校などの困難を抱える中高生の支援を行っています。

僕が従事しているのは“全国高校生マイプロジェクト事業”といって、高校生がこういう未来を作りたいだとか、この課題を解決したいと思ったことを実際に解決していくプロジェクト型学習を広めていく事業です。マイプロジェクトに取り組む高校生や、彼らを応援する先生や学校を増やすために日々奮闘しています。

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どのようにして、その環境を整えているのでしょう?

大きく分けて3つの試みがありますが、まずはプロジェクトを考えた高校生が相互に発表することで学び合ったり、互いに刺激を得て次への意欲を育むために“マイプロジェクト・アワード”という発表会を全国13か所で開催し、年度末には全国大会を実施しています。

高校生だけではなく、彼らに伴走している先生方がノウハウを交換する“伴走者フォーラム”や、オンラインで各地の先生方をつないで「高校生が主体的に学んでいくためにどうすればいいのか」を話し合う探究に関する勉強会もあります

そして県教委の方と一緒になって、県単位での仕組みや取り組みをつくっていく。その3つが大きいところです。

これまでに、どんな面白いプロジェクトがありましたか。

ある高校生が地元である宮城県気仙沼市の魅力を発信するために、恋人向けの観光地をマップで紹介し、さらにツアーを行うプロジェクトを実行しました。その子は高校卒業後、「まだ今の自分にできることは少ないけれど、地元を元気にするために自分の力を伸ばしたい」ということで、コミュニティデザインという地域を元気にする手法を学べる大学に入学し、卒業後は地元で起業して、現在は気仙沼市でデザイナーとして頑張っています。

高校生のうちに「自分にもできる」という感覚を得ることで、その後の人生において自分のやりたいことにチャレンジする意欲が培われるのではないかと。そんな風に思います。

そして各々のプロジェクトを発表する場として、マイプロジェクト・アワードがある。面白い試みですね。

2013年にスタートした当時は、13プロジェクトのみの参加でしたが、昨年度は562プロジェクトに増え、参加者は約3000人でした。彼らをサポートする“パートナー”と呼ばれる高校や団体は150を超え、マイプロジェクトが広がりを見せていることを実感しています。

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どんな時にやりがいを感じますか?

アワードを立ち上げた2013年に参加していた高校生たちが社会人世代になってきているので、その子たちが納得して進路を選べたり、アワードでの経験が社会人になって生きていると聞くと、やっている意味があったなと感じますね。

教育は短期的に成果が出ないものですよね。

おっしゃる通りです。ただ、身近なところでもやりがいを感じることはあって、例えばマイプロジェクトに参加する前は自分の意見を話せなかったり、やってみたいと思っていることを行動に移せなかった子が、プロジェクトを通じて成長していく姿を見ると嬉しく思います。

最初は人についていっていた子が、次は自分がプロジェクトのオーナーになる!と皆を引っ張っている姿を見ると、やはりこういった機会があることは大事だと実感させられます。

マイプロジェクトのゴールとは?

高校生1万人がプロジェクトに取り組むことを目指しています。もっというと高校生は300万人いるので、その1割の3万人まで届くこと、そして彼らをサポートする高校や団体が増えていき、高校生がチャレンジできる環境や機会が日本中にあふれている状態が理想ですね。

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ご自身の今後のビジョンは?

2022年から新高等学校学習指導要領が実施されることになり、社会に広かれた教育課程の中で、未来を作れる高校生をいかに育くんでいくのかが注目されています。それを具現化している地域や学校に貢献していければと考えています。

現在の職場の良い点とは?

実現したい未来が重なっているので“同士”という感覚があります。

子どものことが好きな人が多いので、子どもの成長を応援することがベースにあるのと、団体のクレド(行動指針)である「自律、共生、イノベーション」を体現し、成果に向かって風通しがよく、皆でワイワイ取り組んでいく空気があります。

立場やその人のスペックにこだわらず、成果に対して効果的な方法は採用したり、自分自身が組織にぶら下がることなく価値を作っていけることを意識している人が多いと思います。

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どんな人材を求めていますか?

ミッションに共感できる人が、まず一番。それと、目指す未来に向けて色んな山の上り方をして、どれが一番効率が良いか、効果的かを試す機会が多いので、一緒に価値を作りながら変化を作れる人が文化に合うのではないでしょうか。

関わる人数が増えれば増えるほど、若者がチャレンジできる環境が増えていきそうです。

高校生に限らず、小学生からは社会人まで幅広い世代がチャレンジできる環境が日本にどんどん増えていくといいですね。課題先進国と言われる日本では、自ら価値を作っていける人であったり、生活をより良くしていく力が必要とされているので、チャレンジを応援する機運や環境がもっと増えるといいなと思います。

あなたの“つくばウェイ”とは?

意味あることを、しっかり積み重ねていくこと。真摯に意味あることに向かっていくことを、研究や授業の領域でも感じることは多かったです。

現役大学生や筑波大を目指す人に一言!

僕は大学3年まで何もチャレンジせずに悶々としていましたが、一歩、別の世界に飛び込むことで視界が開けました。時が来たタイミングを逃さず、何事にも挑戦いくといいのではないでしょうか。

山田将平さんが所属する
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プロフィール
山田将平紹介
山田将平(やまだしょうへい)
1991年愛知県名古屋市生まれ。市立向陽高校卒業後、筑波大学人文・文化学群に入学。大学を1年休学し、高校生の作りたい未来に対するプロジェクトをサポートすることに熱中。子どもたちの成長に関わるためにNPOカタリバに入職。”マイプロジェクト事業”を担当し、高校生たちが創りたい未来に向けてチャレンジできる環境づくりを行っている。
基本情報
所属:認定NPOカタリバ マイプロシェクト事務局
役職:マネージャー
出生年:1991年
血液型:B型
出身地:愛知県名古屋市
出身高校:名古屋市立向陽高校
出身大学:筑波大学 人文・文化学群
筑波関連
学部:人文・文化学群比較文化学類
研究室:廣瀬ゼミ
住んでいた場所:
行きつけのお店:ZEYO
プライベート
趣味:サッカー観戦、ドライブ
心に残った本:教育思想のフーコー―教育を支える関係性(田中智志)
好きなマンガ:センゴク(宮下英樹)、鉄コン筋クリート(松本大洋)
好きなスポーツ:サッカー、野球
好きな食べ物:うどん
訪れた国:3カ国
大切な習慣:決めたことはすぐに行動
座右の銘
  • 高校生が社会の中で主体的に学べる環境を目指して

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