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アフリカ代表として、2025年のクラブワールドカップに出場する

Sportsperson
2021/11/29
インタビュー
  • 166
サッカー選手 ガーナ共和国Ebusua Dwarfs FC所属
森下仁道
(社会・国際学群国際総合学類 2015年入学)

アフリカ・ガーナ共和国で、日本人として初めてプロサッカー選手になった森下仁道さん。海外経験が豊富で、日本人としてのアイデンティティ、そして海外で培ったアイデンティティのはざまで苦悩することもあったが、世界共通言語と言われるサッカーに助けられた。筑波大に進んだからこそ今に行き着いたという、その道のりとは?

気付いたら「ガーナでサッカーしてるやん!」

現在、ガーナのケープコーストで生活されているそうですね。どんなお仕事をしているのですか?

Ebusua Dwarfs FCというチームに所属し、プロサッカー選手として活動しています。
それ以外にも指導者として現地の子供たちにサッカーを教えたり、英語を学びたい日本人とアメリカ人講師をつなげるオンライン英会話サービスの運営。そういった活動をYouTubeなどで発信するSNS活動と、僕のことを応援してくれている人と個別でやりとりするオンラインコミュニティも行っています。

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多岐に渡る活動の中で、まずはサッカーのお話からお聞きしたいのですが、いつからサッカーを始めたのですか?

5歳の時、父の仕事の都合でオランダで暮らすことになりました。その時、オランダのトップリーグで活躍する小野伸二選手の姿を見て、サッカーを始めようと。小学校3年で日本の岡山県に帰ってきてからもサッカーを続けて、県大会優勝。中学時代には全国大会に出場するなど、ずっとサッカー中心の生活を送ってきました。

高校3年で休学し、父親のインドネシア赴任に帯同して、現地でもサッカーをする毎日。東南アジアサッカー大会で準優勝、そして僕個人が大会優秀選手に選ばれました。

なぜ筑波大にいこうと?

中学2年の頃に筑波大体育専門学群に入ってサッカーをしようと目標を定めて、そこから一切迷いはありませんでした。大学サッカー界の日本最高峰のレベルでサッカーをつきつめること、その先にプロになることを目指して、筑波大学蹴球部でサッカーをしたい、入るなら元々決めていた体育専門学群に、と思っていました。

ただ、1年のインドネシア滞在から日本の高校に復学し、受験を控えていた頃、先生に「国際総合学類の推薦を狙ってはみては」とアドバイスをもらって、たしかに僕は体育の教員になりたいわけではないから国際の推薦を受けてみようと。そういった流れでした。

蹴球部ではどんな立ち位置でしたか?

最初に配属されたのは5軍。完全に「井の中の蛙」状態でした。トップチームに限らず下のカテゴリーの選手もみんな上手い。ただ悲観はしませんでした。むしろ「トップチームに上がればプロになる可能性が高まる」という明確な指標が提示されたことでモチベーションが駆り立てられました。しかし頑張っても2軍に引っかかるくらいのレベルでした。

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それでも心のどこかで、いつかトップチームに入ってJリーグに……と狙っていたのですが、3年次に「このままでは蹴球部で自分の価値を還元することはできない」「”自分の価値”とは何だろう?」と。自問自答している頃、蹴球部の仲間が起業したり、プロモーションチームを立ち上げて、ピッチ外でチームに貢献し始めたんですね。それを見て、「悔しい。俺だってもっと活躍できるぞ」と。

どんなことで貢献しようと?

蹴球部の仲間に「海外でプレーしたいから英語を教えて欲しい」「就活で役立てたいから英語を教えて欲しい」と言われることが度々あって。

僕の強みは海外経験なので、グローバルチームを立ち上げて、海外留学生と英語を学びたいチームメイトをつなげたり、青年海外協力隊でボランティア活動をしている蹴球部OBの方のお手伝いとして、使っていないサッカー用品を海外に送るなどしました。

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そういった経験が、アフリカでプレーするという現在につながったのでしょうか。

アフリカでサッカーをするというアイディアは、国際の仲間と宅飲みをしている時に出てきたんです。先ほどお話した通り、“自分の価値”を模索していた頃、僕の武器である国際経験を生かしてアフリカに行けば、自分だけの価値ができるだろうという発想でした。

そんな時、専攻テーマであるスポーツを通じた国際開発、IDS/SDP(※International Development through Sports/ Sports for Development and Peaceの略)の学会がアフリカのザンビアで開かれることを知って、清水(諭)副学長に直談判。帯同させて欲しいとお願いをしました。

そして現地でザンビア代表チームの関係者とつながりができたことで、2018年10月、大学を休学し、ザンビア一部リーグFC MUZAに入団。現地で1シーズン(8か月)、プロサッカー選手としてプレーしました。

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すごいアイディアと行動力ですね。

僕のモットーは“背水の仁道”。背水の陣という言葉と僕の名前をかけ合わせた造語なのですが、自分がそうせざるを得ない状況に追い込むこと、そしてポジティブに成長できる環境に自分を追い込むこと――そういった環境作りを常に意識しています。

決断する時に迷いはないですか?

振り返ってみれば、これまで自分で大きな決断したことはないかもしれません。自分の感情が動く方にひたすら進んで、その選択肢を取るしかない環境を自分で作っているというか。感覚的な話ですけど、その選択肢を取るように周りが仕向けているような、引き寄せられているような感覚もあるんです。そうすることがすでに決まっているかのような。

だから、よっしゃ、やってやろう!という決断をしたことはないんですよ。気付いたら「ガーナでサッカーしてるやん!」っていう感覚です(笑)。

面白いお話ですね。

人との出会いとライフイベントがこれまでの道のりを切り拓き、それが僕の財産になっている。こういった発想は、筑波大、そして蹴球部に身を置いたからこそ養われたものだと思います。

その他、筑波大にいって良かったと思う点は?

大学でIDS/SDPの研究をしたことは、今、子供たちにサッカーを教える上でとても役に立っています。ただサッカーを教えるだけでなく、いかにライフスキルを取得するのか、具体的に言うと、より良い食事、より良い睡眠をすることがなぜ必要なのか、人生はどうすれば目的が達成できるのかといったことを、サッカーを通して教えることができますから。

アフリカで日本人サッカー選手といえば「JINDO」と言われるように

26歳でありながら、これまで色んな岐路に立たされたご経験があるようですが、森下さんのターニングポイントとは?

大きなターニングポイントがこれまでに2つありましたが、まず1つめは小学校時代、あからさまなイジメにあったことです。

オランダから帰国して日本に戻って来た頃、英語交じりに日本語を喋る僕に対して「日本人ではない」と感じる人たちがいて、排除される対象になったようです。その時は家族の存在、そしてサッカーに没頭することでなんとか自分を保つことができました。

それと同時に、日本人であるというアイデンティティを捨てたように思います。「僕は日本人じゃない。JINDO MORISHITAとして生きよう」と。

大学時代はいかがでしたか。

学部が国際だったので、周りの人たちは僕を受容してくれましたし、蹴球部ではサッカーという共通言語があり、僕の話を受け入れてくれたので居心地が良かったです。

アフリカでの居心地はいかがでしょう?

アフリカでは、やっぱり日本人、アジア人として見られるので、サッカーでは認めてくれても「アジア人とは契約できない」といって断られたこともありますし、改めて、「僕は日本人なんだな」と感じることが多かったです。

一方で何度もジャパニーズブランドに助けられて、「日本人としてアイデンティティを失ってはいけない」と思える良い機会になりました。アフリカで、僕の地元岡山に本社がある企業の方と出会い、今シーズンからメインスポンサーをして頂くなど、多くの日本人の方から応援して頂いているんですよ。

では2つめのターニングポイントとは?

海外で生活していた時も、日本に帰国した時もずっと支えになってくれていた姉が、昨年亡くなったことです。あまりにもショックが大きくて、サッカーを辞めようかとも考えたんですけど、家族が「お前の挑戦が家族にとってのエネルギーになっている」と言ってくれて……。

それからは自分のためというよりも、応援してくれる人や愛する人のためにサッカーをしようと。そう覚悟を決めて、2021年3月から再びアフリカに戻り、今はガーナのプロリーグでプレーしています。

とにかくアフリカで、目の前の人生に全力で向き合う。時間が経って、成長した姿を応援してしてくれる人に見せる。また、その積み重ねが、近い将来、何かのカタチでアフリカに恩返しができると信じています。その姿を、姉も見てくれていると思って、覚悟をもって毎日生きています。

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今成し遂げたいこと、人生の目標は?

人生を通しては、明確なビジョンを持っていません。正確にいうと作っていないというか。3、4年前は、アフリカでサッカーしているなんて想像していませんでしたから、人生の大きな目標はその都度、その都度変わってくるものなのだと思います。

近い未来、5年、10年の話でいうと、プロサッカー選手になりたいという自分の夢を叶えてくれたアフリカ、そして支えてくれた人たちに恩返しがしたいです。そのためにはピッチ上で結果を出すことが大事なので、2025年のクラブワールドカップにアフリカ代表として出ることを目標設定しています。

4年後に大舞台で森下さんの姿が見られると思うと、楽しみですね。

アフリカ人に「日本のサッカー選手で誰を知っているか」と聞いたら、本田圭佑選手、香川真司選手の名前が挙がりますが、いつか「JINDO MORISHITA」と、僕の名前を言ってもらえるように頑張りたいです。

それと、日本とアフリカをサッカーでつなぐことにも取り組んでいて、ガーナの代表選手をJリーグに売り込むなど、スポーツを通した外交に貢献できたらなと。日本サッカー協会やアフリカ諸国の大使館の方とお話させて頂くなど、アクションを起こしているところです。

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サッカーからビジネスまで興味関心を幅広く持っているので、どれに絞ろうかと迷うことはありませんか?

最初の一歩が肝心と言う人がいますが、僕の考えは違う。最初の一歩は大きくなくていいと思うんです。一歩を踏み出して、それをやり切る必要もないし、違うと思ったら修正すればいい。

日本は1つのことをやり遂げる美徳がありますが、それは美しいけれど、必ずしも正しいとは限らなくて。とりあえず興味があることがあったら一歩を踏み出して、「これが私のやりたいことだ!」と確信が持てたのなら、覚悟を決めてやり切ればいいのではないかと思います。

特に学生のうちは、大学というリソースを使いながら色んな仮説、検証ができる時期なので、重く考えずに一歩を踏み出してみることが大事なのではないでしょうか。

最初の一歩に重く考えてしまうことで一歩が踏み出せなくなったり、途中で辞められなくなる可能性があるので、森下さんの考え方は、さすが海外で生活をしてきた人の視点だなと。

ありがとうございます。ただ、日本人的な“義理人情”は大事にしようと心がけていて、お世話になった人には、いつか必ず恩返しをしたい。そういった日本人の良い面、海外で培った感覚の両方を取り入れて、今の僕があるのかなと思います。

あなたの“つくばウェイ”とは?

夢を実現するためのヒントの見つけ方を筑波大学では学びました。

準備を欠かさないこと。
情熱を持って愚直に挑戦し続けること。
そして、出会いと別れを大切にすること。

僕の「つくばウェイ」はこれからも進化し続けます。
5年後、10年後の記事は更に面白いはずなのでご期待ください!(笑)

現役大学生や筑波大を目指す人に一言!

僕が大学に入学した当初は、サッカー以外やりたいことなんて一切ありませんでした。おそらく「やりたいこと」って大半はやってみて気づくものだと思います。
数年前までアフリカにいるなんて想像だにしてませんでしたから(笑)

だからこそ僕はまずやってみて、心に残る違和感を大切にしています。
きっとそのなかに自分が大事にしている価値が埋もれていると思っているからです。

そしてそれを見つけ出す環境が筑波大学にはあります。

偉そうなことは言えませんが、是非筑波大学で色んな経験をし、色んな違和感を覚えてみてください!

森下仁道さんが所属する
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プロフィール
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森下仁道(もりしたじんどう)
森下仁道(もりした じんどう) 筑波大学社会・国際学群国際総合学類出身。 現在は、ガーナ・プロリーグのケープ・コースト・エブスア・ドワーフスFCに在籍。ポジションはFW。 2025年クラブワールドカップにアフリカ代表として出場することを目標に、日々サッカー選手としての真価を求め続けている。 プロサッカー選手としてのキャリア以外にも、現地の子供たちにサッカーを指導、オンライン英会話サービスの運営、SNS発信、オンラインコミュニティの立ち上げ・運用など多方面で精力的に活動している。2021年Global Sports Week主催の「次世代を担うスポーツリーダー世界30人」に選出される。 アフリカにおける日本人サッカー選手の象徴的存在を目指し、JINDO MORISHITAは今日も躍進を続ける。
基本情報
所属:Ebusua Dwarfs FC
役職:サッカー選手
出生年:1995年
血液型:A型
出身地:岡山県倉敷市
出身高校:岡山県立倉敷青陵高校
出身大学:筑波大学
筑波関連
学部:社会・国際学群国際総合学類
研究室:文化人類学/「開発と文化」論ゼミ(関根ゼミ)
部活動:蹴球部
住んでいた場所:一の矢宿舎、天久保3丁目
行きつけのお店:まんぷくや、プリムローズ、肉八や
プライベート
ニックネーム:じんどー
趣味:筋トレ、温泉巡り、美味しいもん食う、寝る
特技:冬眠
尊敬する人:家族
年間読書数:1冊
心に残った本:スラムダンク
心に残った映画:もののけ姫
好きなマンガ:ワンピース
好きなスポーツ:サッカー
好きな食べ物:ラザニア
嫌いな食べ物:タピオカ
訪れた国:20か国以上
大切な習慣:よく鍛えて、よく食べて、よく寝る!
口癖は?:#背水の仁道
座右の銘
  • 克己

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