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新堀口スライダー

選手会の弁護士として、アスリートファーストを実現する

Professional
2018/01/08
インタビュー
  • 97
東京21法律事務所 弁護士
堀口 雅則
(社会学類 1998年入学)

「弁護士」という職業のイメージに反し、現在はプロスポーツ選手で構成される選手会をサポートする弁護士として、「各所に頭を下げています」と笑う。振り返れば、大学時代に学生会長として駆け回った経験が、今に生きているという。アスリートに寄り添い、どんな仕事をしているのか、そして弁護士に必要な要素など、これから弁護士を目指す学生には必見のインタビューだ。

学生会の活動で「足を運んで頭を下げて、話を聴いてもらう」ことの大切さを知った

筑波大を目指したきっかけを教えて下さい。

芸術も体育も含めた色んな学部が1つのキャンパスに集まっているので、色んな人と知り合えるだろうと考えて、筑波大にいくことを決めました。ただ、当時はつくばエクスプレスが通っていなかったので、当時住んでいた横浜から初めて行ったときには「同じ関東なのに、何でこんなに遠いんだ!」とびっくりしましたね(笑)。

社会学類を選んだ理由は?

国際総合学類と社会学類とで迷いましたが、社会学類でなら基礎的な学問を学べると思ったからです。

何のサークルに入っていたのでしょう?

体育会合気道部と、「全代会」という学生会をやっていました。

学生会ではどんな活動をしていましたか。

全学類の代表が集まって「全学学類・専門学群代表者会議」(通称「全代会」)という会議をして、学内の色々なことを決めるんです。例えば食堂の業者を選定する大学の会議に出たり、定期的に副学長はじめ大学側と意見交換をしたり。他大学の学生会と違って思想的な要素はなくて、学生の意見を吸い上げて、大学側と一緒に学生生活を良くしていこうという組織でした。3年生のときには学生会長にあたる議長になったので、入学式などの公式行事には学生の代表として出ていましたね。

当時のことで憶えているのは、全代会で学生による教員の授業評価を始めたことです。当時、他の大学でも始めているところがあって、他の幹部の発案で筑波大にも導入しようということになったんですけど、教授の中には、学生に評価をさせるなんてありえないと反対する人もいて。そんな先生方を説得するために研究室をまわり、頭を下げて、先生方の話をまず聴いて、こちらの話を聞いて貰いました。そうしたら、賛成してくれたり、反対はするけど、活動に理解を示してくれた先生方が出てきたんです。それからは、何か新しいことをやる度に駆け回っていました。思い返せば、頭を下げていた思い出しかないぐらいです(笑)。

堀口1

大変なご苦労だったでしょうね。

3年生の時には合気道部の幹部にもなりましたし、掛け持ちで忙しいのとストレスで、体調を崩してしまいました。合気道部の稽古も休みがちになって部の皆にはものすごく迷惑をかけるし、学生会では駆けずり回って頭下げてばかりだし、逃げたいなあと何度も思いましたね。あの時のことは本当に黒歴史なんですけど、リーダーの責任の重さとか、何かを実現するために、自分から、反対する人のところに足を運んで頭を下げて、相手の話を聴いて、こちらの話も聞いて貰うことの大切さを知ることができました。

卒業後は首都大学東京の法科大学院へ。

当時は法科大学院に行かなくても司法試験を受けることができたのですが、何回か挑戦してもかすりもしない(笑)。そこで、有名な刑法学者である前田雅英先生率いる首都大の法科大学院に入って、さらに同期が根気強く尻を叩いてくれたお陰で、何とか、当時の受験制限の上限である3回目で受かりました。

試験の後はどんな気持ちでしたか?

最後の試験が終わった夜は、あまりにも手ごたえがなくて「もう駄目だ」と(笑)。終電を逃すまでヤケ酒をして、深夜2時くらいに駆け込んだ渋谷のネットカフェで、弁護士になるのはもう諦めて堅実に生きていこうと、ある県庁にエントリーしました。

次の朝、家に帰るなり、母に「今まで迷惑をかけたから、これからは公務員になって真っ当に生きていくよ」と言ったら、母親が「あなたが公務員になったら、上司と喧嘩して3日で辞める。」と(笑)。「せっかく今まで好きなことやってきたんだから、これからも好きなことやりなさい。」と言われました。

それを聞いて、どう感じましたか?

その言葉が嬉しくて、布団に入ってぼろぼろ泣きました。で、この夜に父に励ましてもらい、盛り上がった勢いで何故か世界一周旅行に出かけて、帰国したら合格していました。

そして、現在も勤めている東京21法律事務所に就職されたそうですね。

弁護士である叔父の紹介で、スポーツ弁護士の草分けの一人である長嶋憲一先生の事務所に入れて頂きました。長嶋先生は1985年に日本プロ野球選手会を労働組合にした弁護士です。プロ野球選手会を労働組合にしたことは、それまでは不当な扱いを受けても満足に文句を言えなかったプロ選手が、チームや協会に対等にものを言える環境を作ったという、プロ選手の権利向上の面でとても画期的な出来事でした。

現在、私は長嶋先生のもとで修行させていただきながら、日本バスケットボール選手会と、日本ラグビーフットボール選手会の担当弁護士を務めています。

新堀口1

今日は今日、明日は明日と切り替える

仕事内容を教えて下さい。

選手は、必ずしも自分が結んでいる契約の内容や、所属しているリーグの規則がどうなっているかを知りませんし、中には不当なルールもあります。それらが原因で選手がチームや協会とトラブルになったときに、選手会の弁護士として、チームや協会と協議して解決を図るのが僕の役割です。また、選手に対して、スポーツ選手だからこそ生じる法的リスクやその回避方法などの講習もしています。

大変なお仕事ですね。

選手の中には契約内容をよく分からずにサインをしている人もいるし、今まで長年使われてきた契約書の中には、法律家からするとありえない内容の契約書もあるんです。そういったおかしい契約書に気づかず判子を押さないように、事前に選手に説明するのはもちろんですし、まず選手自身が意識を高めてくれるように知識を提供しています。

スポーツ業界は狭い業界ですし、仮にトラブルになったとしても、選手もチームも後々に引きずらないのが一番です。そのためには、選手だけでなく、チームや協会の事情も十分に聴くことも重要。ときには選手の代わりに足を運んで話を聴いて、頭を下げて、こちらの話を聴いてもらうこともあるので、そこは学生時代の経験が活きていると思います。

「アスリートファースト」とは、皆で選手を一番に扱って守ろう、というのはもちろんですが、個々の選手が意識を高めて自分たちの価値を上げていき、主体的にチームや協会と協力してそのスポーツを盛り上げていく、そんな意味合いもあると私は考えています。

堀口2

その他にはどんな事案を扱うのですか?

交通事件でも離婚事件でも、スポーツ選手の特殊性を踏まえて事件処理するようにしています。また、近頃は、スポーツ団体や、学校の部活内部の、パワハラやセクハラの事件を扱うことが増えてきました。まずトラブルが起こらないように講習する、万が一トラブルが起こったとしても、二次被害を生まないように丁寧な初期対応で解決を図る、という対策が、スポーツ界だけではなく、教育界でも広がるように、お手伝いしていきたいと思っています。

弁護士になるのに必要な性格とは?

うーん、事件ごとに頭を切り替えられることでしょうか。弁護士は基本的に、他人のトラブルに首を突っ込む職業なので、どうしても当事者の負の感情に引きずられがちなんです。一生懸命やっても依頼人に納得してもらえず、落ち込むことも多いですし。

そんな時、気分転換して、すぐに忘れられることが必要かな、と。今日は今日、明日は明日――そして次の仕事に取り掛かる、切り替えの早さが大事だと思います。

弁護士とはどれくらいで一人前になるものなのでしょう?

私は弁護士になって数年しか経っていませんし、まだまだ一人前じゃありません。やればやるほど奥の深い世界なので、長嶋先生をはじめ諸先輩方に教えていただくことはたくさんありますし、日々修行だという気持ちで仕事に取り組んでいます。

新堀口2

今振り返って、筑波大で良かったと思うことはありますか。

他分野の友達がたくさんできたことですね。特に私はスポーツ法務を扱っていますので、スポーツが強い筑波大で学び、友人が出来たことはとても大きいです。体育専門学群の小笠原一生くん(大阪大学助教。つくばウェイvol95で紹介)は追越宿舎で部屋が隣りだったことから意気投合して、それからの付き合いです。彼の研究は素晴らしいものですし、同期として彼の活躍が励みになるので、お互い、出張したときには盃を交わしながら、色々教えて貰っています。小笠原くんを含め、体育だけではなく、芸術、医学、文系、理系、各分野のプロフェッショナルと知り合うことができたのは、弁護士という仕事にとっても、また、私の人生においても、とても有り難いことです。

では今後のビジョンを教えて下さい。

プロ選手の選手会は、国際的には「あって当然」なものですが、国内にはまだまだ少ないのが現状です。なので、ラグビーとバスケットの選手会を発展させるお手伝いをしながら、他のスポーツでも選手会が出来るように選手のお手伝いをしていきたいですね。

あと、ラグビーとバスケットの仕事にかかわっているので、2019年のラグビーW杯と2020年のオリンピック・パラリンピックの成功に向けて、選手会の立場から尽力したいと思っています。
ラグビー界にもバスケット界にもまだまだ色々な問題がありますが、本大会までに何とかしなければという危機感を選手会、協会、リーグなどの関係者全員で共有して、ひとつひとつ解決していきたい。また、本大会後に勢いがなくなってしまっては意味がないので、本大会後にも「熱」を継続出来るように、準備をしていきたいです。

大きい石を取り除くことはすぐにはできないけれど、道にある小石を一個ずつどけて歩きやすくするようなイメージで、選手の声を丁寧に拾いながら、選手がプレーしやすい環境を作っていきたいですね。

新堀口3

あなたの“つくばウェイ”とは?

多士済々、ですね。色んな分野の一流になりうる学生が揃っているので、他学類の人と交流を持っておくことで、社会人になった時に他分野のスペシャリストとのコネクションが持てる。それが筑波大の良さだと思います。

現役大学生や筑波大を目指す人に一言!

筑波大出身者は世界の色々な分野の色々なところにいるので、自分が何かをやろうと思えば、いくらでもリソースを使うことができる大学です。ぜひ自分がやりたいことを見つけて、フル活用して下さい!

プロフィール
堀口プロフィール
堀口 雅則(ほりぐちまさのり)
1979年生まれ、神奈川県出身。海城高等学校を卒業後、筑波大学社会学類に進学。在学中は体育会合気道部に所属する傍ら、学生会の議長としても活躍。卒業後は首都大学東京法科大学院に進学。司法試験合格後は東京21法律事務所に入所し、スポーツ弁護士の草分けである長嶋憲一弁護士の元で経験を積む。現在、日本バスケットボール選手会、日本ラグビーフットボール選手会の担当弁護士として主にスポーツ法務の分野で活躍中。
基本情報
所属:東京21法律事務所 
役職:弁護士
出生年:1979年
血液型:A型
出身地:神奈川県横浜市
出身高校:海城高校
出身大学:筑波大学
出身大学院:首都大学東京 大学院
所属団体、肩書き等
  • 日本スポーツ仲裁機構 仲裁人・調停人候補者
  • 日本スポーツ法学会 会員
筑波関連
学部:社会学類 
研究室:民事訴訟法ゼミ、行政法ゼミ
部活動:体育会合気道部、全学学類専門学群代表者会議、劇団竹蜻蛉
住んでいた場所:追越宿舎、柴崎
行きつけのお店:くぼや(バイトもしてました)
プライベート
ニックネーム:くまさん
趣味:スポーツ観戦
年間読書数:約40冊
心に残った本:オクシタニア(佐藤賢一著)
好きなマンガ:プラネテス(幸村誠著)、G戦場ヘブンズドア(日本橋ヨヲコ著)
好きなスポーツ:プロ野球、バスケット、ラグビー、競輪
訪れた国:8カ国
大切な習慣:ご飯は自宅で食べる
座右の銘
  • 乾坤一擲

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