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キッチンカーは魂の仕事。彼らの役に立ちたいと起業した

Entrepreneur
2022/06/06
インタビュー
  • 171
Univelホールディングス株式会社 代表取締役
八田 康平
(体育専門学群・2010)

三井住友海上という安定を捨て、オフィス街やイベント会場で見かけるキッチンカーをサポートすべく会社を設立。プロ選手になりたいと夢見てサッカーに取り組んだ幼少時代から蹴球部に至るまで、一流と呼ばれる選手たちに接し、その出会いが今、彼が進む道の指針になっているようだ。

―お仕事の経歴を教えて下さい。

2015年に大学を卒業後、三井住友海上火災保険株式会社に就職しました。保険代理店担当の営業マンとして新規契約の獲得をする中で、ある保険代理店の店主との出会いがあり、2020年に起業するに至っています。

―起業を決意するほどの大きな出来事だったのですか?

はい。その方は株式会社フードトラックカンパニーというキッチンカー製作販売メーカーの経営者でもあり、陸送保険という自動車の輸送時の保険について興味をお持ちでした。

1時間ほどヒアリングし、キッチンカー事業の自動車保険と賠償責任保険のご提案をさせて頂き、3年ぐらい一緒に事業の拡大を進める中でキッチンカーの業界がどんどん伸びていったのと、キッチンカーをやろうとする人たち、開業する人たちがすごく明るくてパワーがある人が多いなというのが、強く印象に残って。

―他の職業の方と何が違うのでしょう?

金融の仕事をしていると色んな人に会いますが、キッチンカーをやっている人は毎日色んな場所に車を運転していって、笑顔で接客して、帰ってきて料理を作る。
体力的に大変なのに、めちゃくちゃ儲けたいと思っているわけじゃなく、楽しいからやっているとか、お客様が喜んでくれるからやっているとか、そういう思いを持っている人がほとんどです。

メタバースとかサイバー空間がどんどん広がっていく今の時代において、対面コミュニケーション能力が高い人やそれをやりたいと思っている人は貴重な人材ですし、これは魂がないとできない仕事だと感じて、彼らの手助けをしたいと考えるようになりました。

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―そして2020年に独立。

当時、入社5年で結婚してそろそろ異動という時期でした。以前から起業したいとは思っていましたし、今後、子供ができると会社を辞めづらくなるだろうから、今しかないと会社を辞めて起業。
地域の活性化を実現するべく、キッチンカーと場所側のマッチングをする事業を始めることにしました。

―不安はなかったですか?

めちゃくちゃ不安でしたけど、やると決めたからやるしかないなって。妻には「いけるから」と見栄を張っていましたけど、内心は「やばい」って感じでしたよ(笑)。

―不安とは裏腹に、キッチンカー業界は盛り上がりを見せていますね。

東京都福祉保健局のデータではキッチンカーの登録台数はずっと右肩上がりです。キッチンカーを販売している会社も右肩上がりで伸びていますし、近い分野だとフードデリバリー事業者も伸びている。

テイクアウトの需要が増えるなど、飲食に対する消費行動が変わっているのは明確なので、今後さらに伸びる業界だと思います。

―具体的な業務とは?

まず場所を抑えて、そこにキッチンカーを出店してもらうことがメインで、それ以外にソフト面としてキッチンカー事業に関する保険も扱っていますし、これからはマーケティングもやっていく予定です。

アスリートにキッチンカーを運営してもらうという、セカンドキャリアのサポートも考えています。

―なぜ、アスリートとキッチンカーを結び付けようと?

キッチンカーは普通の飲食店と違って、車が運転できるスキルと料理ができるスキル、そして接客ができることなどエンターテインメントの要素が強いです。

スポーツイベントの開催者やスポーツクラブは、地域とコミュニケーションを取ってファンを増やしたいと考えているので、キッチンカーで地域を回って集客できる人となると、その地域のスポーツチームで活躍していた選手がいいのではないかと。

キッチンカーは冬は寒くて夏は暑いので、スポーツをやっていた人ならそれに耐えられる。全ての要素を兼ね備えた希少価値な存在だと思います。

―良いアイディアですね。

J1のサッカーチームなどにご提案し、検討して頂いていますが、チームのスポンサー企業の敷地に出店して、その収益を還元していけば、スポンサー企業にとってもただスポンサーとしてお金を出すだけじゃなく、付帯収入が得られるメリットがあると思います。

―八田さんご自身は蹴球部出身。サッカーとの出合いとは?

小学生の時に滋賀県のセゾンFCに所属し、乾貴士さん(セレッソ大阪。元日本代表)などと一緒にプレーしながら、プロサッカー選手、そして指導者になる夢を持っていました。

筑波大はプロ選手や指導者を多く輩出していますから、自然と筑波大を目指すようになりましたね。そのために進学校に進み、サッカーを続けながら勉強できる環境に身を置くことにしました。

高校時代、クラブチームから4年アマチュア契約をした後、プロにならないかという話も頂きましたが、筑波大にいくという目標は揺るぎませんでした。

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「自分は何者でもない」という視点を持つことが大事

―筑波大での生活はいかがでしたか。

高校3年で半月板の手術をしたので、大学2年次にトップチームに上がれたらという気持ちでゆっくりスタートしましたが、1年の夏にはトップチームから声がかかり、5試合ぐらいベンチ入りさせてもらいました。
今思えば、あの時ベンチにいた人、僕以外全員がプロになっています。

ポジションを争っていたのは、谷口彰悟(川崎フロンターレ)、車屋紳太郎(川崎フロンターレ)、早川史哉(アルビレックス新潟。つくばウェイvol.143で紹介)、三丸拡(柏レイソル)だったので実力的に仕方ないのですが、自分自身を卑下することなく「絶対に可能性はある」と信じて頑張っていました。

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―進路についてどう考えていましたか?

4年次の1月、大学卒業後もサッカーを続けられる道はないかとギリギリまで探ってはいたんです。ところが3・4年次に痛めてしまった膝の怪我が思うように治らず、サッカー人生も終わりだなと。

すぐに新卒採用のエージェントに登録して、内定をもらえたのが三井住友海上。金融を選んだのは、色んな職業の方に会えると思ったのが理由です。

その後、5年生をやりながら世界を渡航したり、フィリピンに留学したりして就職までの1年間を過ごしました。

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―就職してから起業するまでの経緯は先ほどお聞きしましたが、起業をしてどんな学びがありましたか?

起業をしてから、まさかということが結構起こりました。自分が予測できる範囲はめちゃめちゃ狭いんだなと。
今は起業から1年半が経ち、生活的には安定してきましたが、これから起業しようと思っている人がいるとしたら、「ビジネスは甘くない」と言いたいですね。

働き方として自分の時間を作りたいとか、そういうのであればいいですけど、ビジネスで成功したい、お金儲けしたいという志であれば、そんなに甘くはないです。

―1年半前のご自身に声をかけるとしたら、会社を辞めるなと言うのか、起業をしたほうがいいと言うのか。

自信を持って「会社を辞めた方がいい」と言います。売上のことを考えるのはもちろん大事ですが、会社にいてはできなかったこととして家族の時間が作れたことが大きいです。子供もまだ小さいですし。

―学生に何かアドバイスはありますか?

自分が何がしたいのか、考えても思いつかない時はあると思うので、考えずに行動していることをリスト化してみてはいかがでしょうか。1日の行動を全部書き出して「これを絶対にやっているな」ということ見つけて、深堀してみる。

やりたいことが分からない、イコール自分を知れていないということだから、まずは自分を知ることからスタートすれば、自分がやりたいことが見つかるかもしれません。

―では、事業の上でこだわっていることを教えて下さい。

「自分は何者でもない」という視点、姿勢を持つことにこだわっています。自分自身を過信してしまうと、自分が持っている情報だけで判断し、良い結果を招くこともありますが悪い結果を招くこともあります。

それと、「最初から、これはできないと決めないこと」も心掛けています。
「自分は何者でもない」という謙虚な姿勢でとりあえず何でもやってみて、違った場合はなぜ違ったのか、データが取れるという点で成功だと思うので、とにかくやってみることを大事にしています。

―今後の展望はありますか?

今の時点では分かりません。このまま全力でやり続けることで得られる知識や出会える人、見える景色があるはずで、その世界を見にいきたいというのが正直な気持ちです。

ただ、メタバースやサイバー系にはいかずに、リアルな世界で何かを成し遂げたい、楽しく生きたいというのは一貫しています。

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―大学時代に培ったもので、今の生き方や考え方今につながっているものは?

蹴球部には全国各地のレジェンドたちが集まって、皆に共通しているのは何かに本気になっていることでした。
例えば、同期の(赤﨑)秀平(元ベカルタ仙台)が家のドアに目標を貼って、それを毎日見て出ていく姿であるとか、(谷口)彰悟(川崎フロンターレ)は練習が終わって疲れているはずなのに、すぐに15分、20分ランニングをしていて、あの努力があるから今があるんだろうなと。

自分のやるべきことをやりきることの大切さが学べたのは、筑波大で一流の人たちに出会ったからだと思います。

それと、蹴球部監督の風間(八宏)さんに言われた「常識を疑え」という言葉は印象的で、今でも頭の片隅にある言葉です。

―どのような意味でしょうか。

外から入ってくる情報を全て正しいと思い込むなという意味だと理解したのですが、先生や親、上の立場の人が示してくれていた常識は、本当に正しかったのだろうかと疑うこと、そして自分自身の経験を通して、本当に大切なのは何かを見極めることを学んだような気がします。

―あなたの“つくばウェイ”とは?

自然体であること。何かに影響されずに自分を貫き続けること。自分らしく生きるというイメージです。

―現役大学生や筑波大を目指す人に一言!

自分ができることや目の前のことに全力を注いで下さい。全力でやるからこそ見つかるものがあるはずです。これがやってみたいという根拠のない自信を大切にして、それに向かって愚直に全力で取り組むことで、それは違うよと言ってくれる人や、もっとやれと言ってくれる人、そういう出会いがあるはずです。

八田 康平さんが所属する
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プロフィール
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八田 康平(はった こうへい)
八田康平(はった こうへい)筑波大学体育専門学群卒業。卒業後、三井住友海上に就職し、そこで出会ったキッチンカー事業者の姿に感銘を受け起業を決断。モビリティ事業のマッチングプラットフォーム「Mobicook(モビクック)」を立ち上げ、現在では約900社の事業者が登録するサービスへと成長させた。人と人との繋がりを大切にしながら、笑顔が溢れる瞬間をお届けしたいという想いに基づき、地域コミュニティの活性化やより豊かな暮らしの実現を目指している。
基本情報
所属:Univelホールディングス株式会社
役職:代表取締役
出生年:1991
血液型:A型
出身地:滋賀県大津市
出身高校:滋賀県立膳所高等学校
出身大学:筑波大学
出身大学院:なし
所属団体、肩書き等
  • 筑波大学蹴球部 副将
筑波関連
学部:体育専門学群
部活動:コーチング言論研究室
住んでいた場所:天久保3丁目
行きつけのお店:百香亭、めし食うべ
プライベート
ニックネーム:こーへー、はった、はち
趣味:フットサル、ゴルフ
特技:子どもと遊ぶこと
尊敬する人:祖父
年間読書数:20冊前後
心に残った本:努力論(幸田露伴著)
心に残った映画:インセプション(クリストファー・ノーラン監督)
好きなマンガ:ハンターハンター(冨樫義博著)
好きなスポーツ:サッカー、バスケ、ゴルフ
好きな食べ物:焼肉、ハンバーガー
嫌いな食べ物:パクチー
訪れた国:15カ国
大切な習慣:出来る限り身体を動かす
口癖は?:ありがとう!
座右の銘
  • 感謝の気持ちと謙虚な心

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